交通事故に関する分野

後遺症の等級の認定

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「1」 後遺障害とは何ですか?

治療を継続しても,これ以上症状が改善しない状態になったとき(症状固定)に残った精神的・身体的な障害をいいます。

「2」 後遺障害が発現したことによる損害賠償には,どのようなものがありますか?

逸失利益と慰謝料です。
後遺症の程度によって,自動車損害賠償保障法施行令(自賠法施行令)では,介護を要する後遺障害として2等級,後遺障害として14等級が定められており,等級に対応する労働能力が喪失したことから,逸失利益と慰謝料が認められます。

「3」 後遺障害の等級はどのようにして認定されますか?

認定のための必要な書類(診断書,診療報酬明細書,後遺障害診断書,画像等)を損害保険料率算出機構に提出することになりますが,その方法としては,①被害者が自賠責保険会社を通じて直接申請する方法と,②加害者側の保険会社に必要書類を提出してその保険会社から申請してもらう方法があります。
損害保険料率算出機構は,提出された書類を調査して後遺障害を認定します。

「4」 損害保険料率算出機構の認定に対し不服がある場合はどのようにすればいいですか?

損害保険料率算出機構に等級認定に不服がある場合は,損害保険料率算出機構に異議申立てをすることができます。損害保険料率算出機構に対する異議申立ては,何回でもできますが(但し,時効に注意して下さい),自賠責保険・共済紛争処理機構へ異議申立てをすることもできます。自賠責保険・共済紛争処理機構に対する異議申立ては1回のみできます。

損害保険料率算出機構や自賠責保険・共済紛争処理機構に対する異議申立ての結果に不満がある場合は,訴訟を提起して損害保険料率算出機構や自賠責保険・共済紛争処理機構による結論を争うことになります。

「5」 後遺障害1級~14級にはどのようなものがありますか?

自動車損害賠償保障法施行令の別表第1及び第2に等級別の後遺障害が定められています。
以下は,自動車損害賠償保障法施行令の別表第一及び第二から引用した等級別の後遺障害です。

別表第一
等 級 介護を要する後遺障害
第1級
一 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
二 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
第2級
一 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
二 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

別表第二
等 級 後遺障害
第1級
一 両眼が失明したもの
二 咀嚼そしやく及び言語の機能を廃したもの
三 両上肢をひじ関節以上で失つたもの
四 両上肢の用を全廃したもの
五 両下肢をひざ関節以上で失つたもの
六 両下肢の用を全廃したもの
第2級
一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
二 両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
三 両上肢を手関節以上で失つたもの
四 両下肢を足関節以上で失つたもの
第3級
一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
二 咀嚼そしやく又は言語の機能を廃したもの
三 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
四 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
五 両手の手指の全部を失つたもの
第4級
一 両眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
二 咀嚼そしやく及び言語の機能に著しい障害を残すもの
三 両耳の聴力を全く失つたもの
四 一上肢をひじ関節以上で失つたもの
五 一下肢をひざ関節以上で失つたもの
六 両手の手指の全部の用を廃したもの
七 両足をリスフラン関節以上で失つたもの
第5級
一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になつたもの
二 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
三 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
四 一上肢を手関節以上で失つたもの
五 一下肢を足関節以上で失つたもの
六 一上肢の用を全廃したもの
七 一下肢の用を全廃したもの
八 両足の足指の全部を失つたもの
第6級
一 両眼の視力が〇・一以下になつたもの
二 咀嚼そしやく又は言語の機能に著しい障害を残すもの
三 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
四 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
五 脊せき柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
六 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
七 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
八 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの
第7級
一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になつたもの
二 両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
三 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
四 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
五 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
六 一手のおや指を含み三の手指を失つたもの又はおや指以外の四の手指を失つたもの
七 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの
八 一足をリスフラン関節以上で失つたもの
九 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
十 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
十一 両足の足指の全部の用を廃したもの
十二 外貌に著しい醜状を残すもの
十三 両側の睾こう丸を失つたもの
第8級
一 一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
二 脊せき柱に運動障害を残すもの
三 一手のおや指を含み二の手指を失つたもの又はおや指以外の三の手指を失つたもの
四 一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの
五 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの
六 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
七 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
八 一上肢に偽関節を残すもの
九 一下肢に偽関節を残すもの
十 一足の足指の全部を失つたもの
第9級
一 両眼の視力が〇・六以下になつたもの
二 一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
三 両眼に半盲症、視野狭窄さく又は視野変状を残すもの
四 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
五 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
六 咀嚼そしやく及び言語の機能に障害を残すもの
七 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
八 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
九 一耳の聴力を全く失つたもの
十 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
十一 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
十二 一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの
十三 一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの
十四 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの
十五 一足の足指の全部の用を廃したもの
十六 外貌に相当程度の醜状を残すもの
十七 生殖器に著しい障害を残すもの
第10級
一 一眼の視力が〇・一以下になつたもの
二 正面を見た場合に複視の症状を残すもの
三 咀嚼そしやく又は言語の機能に障害を残すもの
四 十四歯以上に対し歯科補綴てつを加えたもの
五 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
六 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
七 一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの
八 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの
九 一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの
十 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
十一 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
第11級
一 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
二 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
三 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
四 十歯以上に対し歯科補綴てつを加えたもの
五 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
六 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
七 脊せき柱に変形を残すもの
八 一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの
九 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
十 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
第12級
一 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
二 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
三 七歯以上に対し歯科補綴てつを加えたもの
四 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの
五 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
六 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
七 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
八 長管骨に変形を残すもの
九 一手のこ指を失つたもの
十 一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
十一 一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの
十二 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの
十三 局部に頑固な神経症状を残すもの
十四 外貌に醜状を残すもの
第13三級
一 一眼の視力が〇・六以下になつたもの
二 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
三 一眼に半盲症、視野狭窄さく又は視野変状を残すもの
四 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
五 五歯以上に対し歯科補綴てつを加えたもの
六 一手のこ指の用を廃したもの
七 一手のおや指の指骨の一部を失つたもの
八 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの
九 一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの
十 一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの
十一 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
第14級
一 一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
二 三歯以上に対し歯科補綴てつを加えたもの
三 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
四 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
五 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
六 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの
七 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの
八 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
九 局部に神経症状を残すもの

「6」 逸失利益と慰謝料の額に後遺障害の等級はどのように影響しますか?

逸失利益算出に用いられる労働能力喪失率と後遺障害等級の関係は以下のとおりです。
  等級     労働能力喪失率
  第1級     100%
  第2級     100%
  第3級     100%
  第4級      92%
  第5級      79%
  第6級      67%
  第7級      56%
  第8級      45%
  第9級      35%
  第10級     27%
  第11級     20%
  第12級     14%
  第13級      9%
  第14級      5%

後遺障害の等級(第1級~第14級)に応じた慰謝料の基準は以下のとおりです。

後遺障慰謝料表(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編集・発行の「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」から引用)

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後遺症・死亡の各逸失利益

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「1」 逸失利益とは何ですか?

交通事故によって被害者に後遺症が生じた場合,後遺症によって被害者の労働能力が低下するため,被害者が将来得ることができたはずの経済的利益(給与・報酬など)が減少します。
また,交通事故によって被害者が死亡した場合,被害者が将来得ることができたはずの経済的利益(給与・報酬など)を得ることができなくなります。
このように,後遺症により減少した経済的利益のことを後遺症による逸失利益といい,死亡により得ることができなくなった経済的利益のことを死亡による逸失利益といいます。

「2」 後遺症による逸失利益は,どのように計算するのですか?

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
【具体例】
症状固定時45歳で年収600万円の男性が45%労働能力を喪失した場合

600万円×0.45×13.1630(労働能力喪失期間22年(67歳―45歳)のライプニッツ係数)
=3554万0100円

ただし,18歳に達するまでは経済的利益が発生していないと考えられることから,症状固定時18歳未満の未就労者については,以下の計算式で計算します。
基礎収入×労働能力喪失率×(症状固定時の年齢から67歳までのライプニッツ係数-症状固定時の年齢から18歳に達するまでのライプニッツ係数)
【具体例】
症状固定時12歳の男性が45%労働能力を喪失した場合(基礎収入は,平成28年男性労働者学歴計全年齢平均賃金549万4300円としました)
549万4300円×0.45×(18.6335-5.0757)
=3352万0779円(端数切捨)
67年-12年=55年に対応するライプニッツ係数18.6335
18年-12年=6年に対応するライプニッツ係数5.0757

「3」 ライプニッツ係数とは何ですか?

逸失利益は,長期間にわたって発生する逸失利益を一時金として算出するものであるが,それでは,本来得られない金額を一時に利用することができることになるため,その不公平(中間利息)を控除するのがライプニッツ係数です。
労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数は以下のとおりです。

ライプニッツ係数
syuro.jpg
(国土交通省・「就労可能年数とライプニッツ係数表」(http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/syuro.pdf)より引用)

「4」 基礎収入はどのように算出しますか?

休業損害の場合と基本的には同じように算出され,交通事故発生の前年度の年収額を基礎として算出します。
ただし,休業損害が症状固定までの比較的短期間についての収入減少が問題とされるのに対して,後遺症による逸失利益が就労可能年数期間という長期間についての収入減少が問題となることから,後遺症による逸失利益の場合は,基礎収入の算定について,賃金センサスを用いることが多いです。

「5」 事故当時収入が無い人も後遺症による逸失利益を請求することができますか?

専業主婦など家事従事者については,休業損害と同様に,家事労働を金銭的に評価されうるものであるから,後遺症による逸失利益を請求することができます。

幼児・児童・学生について,事故当時は収入がないので休業損害は認められませんが,将来的には稼働して収入を得るものと考えられるので,後遺症による逸失利益を請求することができます。

失業者についても,就業の可能性が無い場合を除き,将来永久的に失業したままではないと考えられるので,後遺症による逸失利益を請求することができます。

なお,以上のとおり,事故当時収入が無い人は,将来就労の可能性が無い場合を除き,後遺症による逸失利益を請求することができますが,その場合の基礎収入は,賃金センサスを用いて算出するのが一般的です。

「6」 労働能力喪失率とは何ですか?

後遺症が残存したことによって労働能力が低下したことの比率です。
以下の表が,後遺障害の等級別による労働能力喪失率は,以下の表のとおりです。

労働能力喪失率表
sousitsu.png
(国土交通省・「労働能力喪失率表」(http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/sousitsu.pdf)より引用)

「7」 労働能力喪失期間とは何ですか?

症状固定日を労働能力喪失期間の始期とし,就労可能年数とされる67歳を労働能力喪失期間の終期とします。ただし,症状固定時の年齢が55歳以上の者の労働能力喪失期間は,平均余命年数の2分の1とし,端数は切上げることもあります。

「8」 死亡による逸失利益は,どのように計算するのですか?

基礎収入×(1-生活費控除率)×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
後遺症による逸失利益の場合と異なり,死亡の場合は労働能力喪失率100%なので,労働能力喪失率をここでは考慮しません。

他方,死亡の場合は,被害者は生活費の支出を免れたので,生活費相当額を控除します。
死亡した人の属性による生活費控除率は以下のとおりです。
一家の支柱(被扶養者1人の場合)   40%
     (被扶養者2人以上の場合) 30%
女性(主婦・独身・幼児等を含む)   30%
男性(独身・幼児等を含む)      50%

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過失相殺・素因減額

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「1」 過失相殺とは何ですか?

被害者に何らかの過失がある場合,加害者・被害者間の損害を公平に分担するため,加害者に対する損害賠償額を減額する制度をいいます。
実務では,過失相殺について判断された多くの裁判例を検討して,事故類型別の過失相殺の基準を算出した,東京地裁民事交通訴訟研究会編「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」別冊判例タイムズ38号が一般的に用いられています。

「2」 過失相殺をするには被害者にどの程度の能力が必要ですか?

事理弁識能力(事の是非善悪を弁識する能力)があれば足り,行為の責任を弁識する能力までは不要です。
具体的には,小学生には事理弁識能力があると考えられ,裁判例では5歳の幼稚園児に事理弁識能力を認めたものもあります。
被害者に事理弁識能力がなかったような場合には,「被害者側の過失」が問題となります。

「3」 被害者側の過失とは何ですか?

被害者本人だけでなく,身分上生活関係上一体をなすとみられる関係にある者の過失を「被害者側の過失」と考え,被害者側に過失があったときは被害者本人に過失があったのと同様に考えることです。
例えば,幼児の場合には,監督義務者(親権者など)の過失を被害者側の過失として考慮するのが一般的です。

「4」 損益相殺と過失相殺は,どちらを先に行われますか?

損益相殺とは,被害者が交通事故に起因して保険給付等の利益を得る場合に,賠償額からその利益分を控除することです。
損益相殺と過失相殺の順序について,
①健康保険,国民健康保険,厚生年金については,損益相殺をした後,残額に対して過失相殺をします。
②労災保険については,過失相殺をした後,残額について損益相殺をします。
③任意保険の賠償責任保険については,過失相殺をした後,残額について損益相殺をします。

「5」 素因減額とは何ですか?

被害者側に,損害が拡大した要因がある場合,賠償額を一定の割合で減額することです。身体的素因と心因的素因とに分けられます。

既往の疾患や体質的要因のことを身体的素因といいます。平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても,それが疾患に当たらない場合には,特段の事情がない限り,素因減額の対象にならないとされています。

精神的傾向や性格等の要因のことを心因的素因といいます。心因的素因が個性の多様さとして通常想定される範囲を超えるものでないときは,素因減額をすることができない,とした判例があります(最高裁平成12年3月24日第二小法廷判決)。

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物損

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「1」 物的損害(物損)とは何ですか?

人の身体以外に生じた損害のことをいい,車両や身に着けていた物が損傷したことによる損害です。

「2」 物的損害を加害者に請求することができるのは誰ですか?

交通事故により車両が損傷した場合,加害者に対して損害賠償を請求することができるのは,車両の所有者であり,事故当時,運転をしていた使用者ではありません。
但し,自動車を実質的に使用・収益していた,割賦販売等の買主やファイナンス・リースのユーザーなども損害賠償を請求することができると考えられています。

「3」 物的損害を誰に請求することができますか?

直接の加害者,車両であれば加害車両の運転者に対して請求するのが原則です。

「4」 加害車両の運転者以外の者に請求することはできますか?

使用者が,事業執行のために被用者を使用していて,被用者が事業の執行のために交通事故を起こした場合には,民法715条の使用者責任を根拠に使用者に対して賠償を請求することができます。
しかし,自動車損害賠償保障法(自賠法)第3条の運行供用者(自己のために自動車を運行の用に供する者)責任により,物的損害の賠償を請求することはできません。運行供用者責任は人身事故による損害賠償責任を認めるもので,物的損害の賠償責任を認めるものではないからです。

「5」 未成年者が運転する車両によって物的損害を受けました。未成年者の親に賠償請求をすることができますか?

未成年者に責任能力がなければ民法第714条により,親権者に対して賠償責任を追及することができます。
しかし,裁判例では,12歳くらいから責任能力を認めているので,免許を取得した未成年者による事故の場合,民法第714条を根拠に賠償責任を追及することはできません。
但し,未成年者が責任能力を有する場合であっても監督義務者の義務違反と未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは,監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立します(最高裁昭和49年3月22日第二小法廷判決)。

「6」 車両が損傷した場合,加害者にどのような請求ができますか?

修理が可能な場合
修理相当額が損害として認められます。
なお,車両を修理する場合には,事故前の車両価額と修理後の車両価額の差額(評価損)について賠償が認められる場合もあります。
また,修理費用が車両の時価及び買替諸費用を加えた金額を超えている場合(経済的全損)には,車両の損害として認められるのは,修理費用ではなく買替差額となります。

修理が不能な場合
事故時の車両の時価と事故後の車両の売却代金との差額(買換差額)が損害として認められます。

車両以外の損害
修理期間中や新車購入までの期間,代車が必要となった場合に,その台車費用が損害として認められる場合があります。なお,事故車両が営業用の車両などであった場合には,その車両を使用していれば得られたはずの利益(休車損)を損害として認められる場合もあります。

車両が修理不能なため車両の買替を行った場合,買替のために必要となった費用(登録手続関係費)も損害として認められます。

「7」 自賠責保険で物的損害を請求することができますか?

自賠責保険は,人身損害のみが補償の対象となっています。物的損害は自賠責保険で補償されません。

「8」 物的損害について慰謝料を請求することができますか?

原則として認められませんが,極めて例外的に物的損害について慰謝料が認められた裁判例も存在します。

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入通院・後遺症・死亡の各慰謝料

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「1」 慰謝料とは何ですか?

交通事故によって受けた精神的苦痛による損害を賠償するのが慰謝料です。
交通事故に関する慰謝料には,入通院慰謝料,後遺障害慰謝料,死亡慰謝料があります。

「2」 慰謝料額について目安となる基準はありますか?

慰謝料は,精神的苦痛を金銭的に評価するものですが,精神的苦痛それ自体を計測することは困難です。
そこで,交通事故に関する慰謝料を算定する基準について,以下の3つの基準が用いられています。
① 自賠責保険が定めている自賠責保険基準
② 任意保険会社が定めている任意保険基準
③ 裁判所・弁護士が使っている裁判・弁護士基準
この3つの基準を額で比較すると概ね,

自賠責保険基準 < 任意保険基準 < 裁判・弁護士基準

となります。
当事務所では,自賠責保険を請求する場合を除き,裁判・弁護士基準を使用しますので,以下では,裁判・弁護士基準を前提として説明をします。また,ここで記載した慰謝料額の基準は,公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編集・発行の「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」から引用したものです。いわゆる赤い本です。

「3」 入通院慰謝料とは何ですか?

病院に入院・通院したことによって生じた慰謝料です。加害者側の事情・被害者側の事情によって慰謝料額が上下することもありますが,基準としては入院・通院をした期間に応じて慰謝料額が算定されます。

「4」 入通院慰謝料の算定基準はどのようなものですか?

入通院慰謝料【別表1】(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編集・発行の「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」から引用)

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この表によると,入院6か月のみの場合は244万円,通院6か月のみの場合は116万円,入院6か月後通院を6か月した場合は282万円となります。

なお,むちうち症で他覚所見がない場合等は,以下の表を使用します。

入通院慰謝料【別表2】(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編集・発行の「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」から引用)

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「5」 後遺症慰謝料とは何ですか?

後遺症が発現したことによる慰謝料です。後遺症の等級(第1級~第14級)に応じた基準は以下のとおりです。

後遺障慰謝料表(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編集・発行の「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」から引用)

kouishouisharyou.jpg

「6」 近親者にも後遺症による慰謝料が認められますか?

重度の後遺症の場合は,介護を余儀なくされるなどの近親者の精神的苦痛が,被害者の精神的苦痛と別個生じるものと考えられることから,近親者にも被害者とは別個慰謝料請求が認められる場合があります。

「7」 死亡慰謝料とは何ですか?

被害者が死亡したことによる慰謝料です。被害者の属性に応じた基準は以下のとおりです。
一家の支柱の場合   2800万円
母親,配偶者の場合  2500万円
その他        2000~2500万円

「8」 近親者固有の死亡慰謝料を請求することができますか?

民法711条により被害者の父母,配偶者,子は慰謝料を請求することができます。また,判例上,父母,配偶者,子に準じる者も慰謝料を請求しうるとされています。
ただし,裁判実務上,近親者固有の慰謝料は,上記死亡慰謝料の表の金額に含まれていると考えられています。慰謝料を請求しうる近親者の人数が増えても,直ちに慰謝料総額が増えるわけではありません。

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治療費・休業損害

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「1」 休業損害とは何ですか?

交通事故による受傷によって休業を余儀なくされたために,その間に得ることのできなかった損害のことをいいます。

「2」 休業損害は,どのように計算するのですか?

基礎収入(1日あたりの収入)に休業日数を乗じて計算します。
(休業損害=基礎収入×休業期間)

「3」 給与所得者の基礎収入はどのように算出しますか?

休業損害証明書(事故直前3か月間の給与額)や源泉徴収票(年収)により,1日あたりの収入を算出します。

「4」 基礎収入を算定するに税金を控除しなければなりませんか?

所得税・住民税などの税金を控除しないのが一般的です。

「5」 有給休暇を使った場合は休業損害として認められませんか?

有給休暇を使っても,休業損害として認められます。

「6」 事業所得者の基礎収入はどのように算出しますか?

確定申告書により,「収入」から「経費」を控除して算出しますが,「経費」の内,地代家賃や租税公課,従業員の給与,減価償却費等の固定費については相当な範囲で休業損害と認められます。

「7」 専業主婦に休業損害は認められますか?

専業主婦など家事従事者に収入はありませんが,家事労働を金銭的に評価されうるものであるから,休業損害は認められます。
この場合,基礎収入は賃金センサスの女子平均賃金により計算します。

「8」 失業者に休業損害は認められますか?

収入がない以上,原則として休業損害は認められませんが,就職が内定している場合など,近い将来に就労する蓋然性が高ければ休業損害が認められます。

「9」 学生・生徒に休業損害は認められますか?

原則認められませんが,アルバイトをしていた場合は認められる場合もあります。

※ お気軽にご連絡ください。

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交通事故に関する分野

momiji-icon01.png交通事故問題についてmomiji-icon2.png

【もみじ総合法律事務所】は設立から10年以上,これまで交通事故についての多数のご依頼があり解決してきました。交通事故の問題は身近な問題でもあるし,弁護士にとってもごく日常的な仕事です。
 過失の割合で双方意見が異なることは多く,また,事故には物損事故対人事故,さらには対人事故の中でも,入通院慰謝料後遺症慰謝料休業損害後遺障害の逸失利益(等級の問題)など様々な問題があります。

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交通事故の当事者の多くは一般の方であり,これに対して,保険会社は豊富な知識・経験を有していますので,対等に交渉することは実際に困難な場合が多いもの事実です。弁護士が介入することで,受けとれる賠償額が大幅に増加することもありますから,是非,一度,ご相談ください。宜しくお願い申し上げます。

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