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※ 遺産分割前の払戻し制度に関する改正について(施行日は2019年7月1日)

・家庭裁判所の判断を経ないで,他の共同相続人の同意なくしてする遺産たる預貯金の払い戻し
 各相続人が単独で払戻しをすることができる額は(相続開始時の預貯金債権の額)×(3分の1)×(払戻しを求める共同相続人の法定相続分)の計算式で算定される額です。
但し,この計算式は,遺産に属する預貯金債権のうち,金融機関の各口座ごとに算定されることになります。また,同一の金融機関に対する権利行使は,150万円)を限度とされています。

・家庭裁判所の判断を経て,他の共同相続人の同意なくしてする遺産たる預貯金の払い戻し
 家事事件手続法の保全処分の要件を緩和するものであり,遺産たる預貯金債権の仮分割の仮処分については,「事件の関係人の急迫の危険の防止の必要があること」(家事事件手続法第200条第2項)を緩和し,裁判所は,遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において,相続財産に属する債務の弁済,相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を行使する必要があると認めるときは,他の共同相続人の利益を害しない限り,申立てにより,遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部を仮に取得させることができることにするものとされることになりました。

1 葬儀費用等について

「1」 被相続人の葬儀費用を相続財産から支払うことはできますか?

被相続人の葬儀用であったとしても,当然にその相続財産からの支払いが認められているわけではありません。
被相続人の葬儀費用は相続財産から支出すべきであるという見解(相続財産負担説)もありますが,現在の実務では多くとられていません。実務の多くは,葬儀を主宰した者(喪主)が負担すべきという見解(喪主負担説)が多くなっています。

「2」 被相続人の葬儀費用を立替払いしました。他の相続人に対して,立替えた費用をどのようにして請求したらいいでしょうか?

葬儀費用は,被相続人死亡後に発生した債務であり,遺産とは別であるため,遺産分割の対象事項には該当しない別の問題です。そのため,立替えた費用についての問題は,原則,遺産分割とは切り離して相続人や関係者間で協議されるべき問題です。葬儀費用に関する協議,協議に折り合いが付かなければ民事訴訟手続(委任・準委任契約に基づく費用償還請求,事務管理,不当利得返還請求等)といった手段が考えられます。
ただし,相続人全ての合意があれば,立替えた葬儀費用について,遺産分割協議や調停の中で併せて話し合い,解決をすることができます。

「3」 父(X)が亡くなり,その相続人は長男の私(A)と次男のBだけです。長男の私がその葬儀費用500万円を立替えました。Bに対して私はいくら請求できるのでしょうか?

葬儀費用の負担について,Xの生前の指示がある場合にその意向に尊重してABが従う場合や,AB間で費用負担についての合意があれば,それによって決めることができます。
このような被相続人Xの指示に相続人のABが従わない場合や合意が無い場合,誰が葬儀費用を負担すべきかは法律で定められておらず,見解も複数あり一律に決まっていません。最初の質問にもあるように喪主が負担するという見解が実務上多くなっています。
ただし,喪主を務めたという一事情のみで全ての費用を負担するのは相続人間の公平に欠くため,各相続人が取得した相続財産の内容・総額,葬儀に関与した経緯・度合い,葬儀費用などを総合的に考慮して,立替えた費用の負担割合を考慮すべきという見解もあります。
この見解の場合,ABが各々取得した相続財産の内容や額に差がないのであれば,相続分に応じて負担されるべきであり,AはBに対し,250万円を限度に請求できることになります。なお,請求の方法としては,事務管理等を根拠にした民事訴訟,あるいは相続人全員の同意があることを前提に遺産分割協議の中で話し合うことが考えられます。
ただし,Aが遺言により法定相続分より多くの相続分を取得していたり,生命保険金の受取人になっていたなど,Aが喪主として葬儀費用を負担することが実質的な公平にかなうような場合には,Aの請求は認められない可能性があります(神戸家庭裁判所審判平成11年4月30日)。

「4」 立替えた葬儀費用を請求された場合に,香典はどのように扱われますか?

香典は,第一次的に葬儀費用に充当されるべきものと考えられます。
香典について,「香典は喪主に贈られたもの」であり,喪主が「香典を第一次的に葬儀費用に充当し,次いで法事等の祭祀費用に充てることができる」と判断した裁判例があります(広島高決平成3年9月30日)。
そのため,立替え葬儀費用を請求された他の共同相続人は,葬儀費用の請求をしてきた相続人に対し香典を誰からいくらもらい,それを葬儀費用にいくら充当したのかの説明を求めるべきです。

2 遺産管理に必要な費用について

「1」 相続財産に関する管理費用(不動産の固定資産税やマンションの管理費等)を立替えて支払った場合に,遺産分割で清算することはできますか?

原則できません。相続財産の管理費用は被相続人死亡後に生じた債務の問題であるため,遺産とは別の問題であり当然遺産から清算されるべきものではないと考えられています。
ただし,現在の実務では,全ての共同相続人間で遺産管理費用の問題を含めて遺産分割手続きの中で清算することに合意ができれば,遺産分割手続きの中で考慮できるとされています。

「2」 遺産管理費用の負担割合はどのようにして決められますか?

一般的には,共有物に関する費用負担の問題として,民法235条1項を根拠に,共同相続人がその相続分に応じて負担するものと考えられています。そして,ここでいう「相続分」とは,特別受益や寄与分を踏まえた「具体的相続分」ではなく,「法定相続分」あるいは遺言によって指定された「指定相続分」を意味するとされています。

「3」 遺産管理費用について,遺産分割手続きでの清算について合意が得られなかった場合には,どのような請求方法が考えられますか。

一般の民事訴訟を提起することになりますが,その根拠としては①不当利得に基づく返還請求,②共有物に関する民法235条1項に基づく請求が考えられます。

「4」 立替えた遺産管理費用の清算が認められない場合はありますか?

あります。
共同相続人の1人が,相続財産である不動産について,「自己のために使用したり,あるいはこれを第三者に貸してその果実を取得していた」場合には,「遺産である不動産の固定資産税,家屋修繕費及び庭維持費,それに要した備品購入費等は遺産管理費用と認めることはできない」として清算を否定した裁判例があります(岐阜家裁大垣支部平成8年10月7日審判,名古屋高裁平成9年10月15日決定)。

3 遺産から発生した賃料等の収益の分配について

「1」 父が死亡し,相続人は私(A)と兄(B)の2人だけでした。父の相続財産の中に賃貸マンションがあり,遺産分割協議の結果,兄のBがマンションを相続することになりました。父の死亡から遺産分割が成立するまでに発生した6か月分の賃料は全て兄のBが相続することになるのでしょうか?

相続発生後~遺産分割成立までの6か月間に発生した賃料債権は,質問者Aと兄のBがそれぞれ相続分(遺言による指定が無ければ各々2分の1)に応じて確定的に取得することになります。
判例上,遺産から生じる賃料等の遺産収益については,その発生時期によって取り扱いが異なっています。
判例は,相続財産である不動産から発生する賃料債権について「遺産は,相続人が数人あるときは,相続開始から遺産分割までの間,共同相続人の共有に属するものであるから,この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は,遺産とは別個の財産というべきであって,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する」と判断されています(最高裁平成17年9月8日)。
そして,ここでいう「相続分」とは,「法定相続分」あるいは遺言によって指定された「指定相続分」と考えられています。
ただし,兄のBがマンション管理費用を負担していた場合,遺産収益からその費用を控除することができると判断した裁判例が多数あります。
そのため,Aが兄のBに対して請求できるのは,{(死亡から遺産分割成立までの)賃料総額-(死亡から遺産分割成立までの)管理費用の総額}×相続分となります。

「2」 遺産収益を具体的に請求する方法を教えてください。

上記質問の判例にあるように,遺産収益は遺産とは別個の共同相続人間の共有財産であるため,原則,遺産分割の対象にはなりません。共同相続人があなたの相続分まで取得していることが法律上の原因を欠いているとして不当利得返還請求,又は違法であるとして不法行為に基づく損害賠償請求が考えられます。
また,遺産収益を遺産分割の対象に含めることについて共同相続人全員の合意があれば,遺産分割手続きの中での解決をすることもできます。

「3」 母が死亡し,私(A)と姉(B)と妹(C)が共同相続人になりました。姉(B)は,母の生前より,母の承諾を得て遺産である家で母と同居しており,母の死亡後も姉(B)が一人で遺産である家を使用しています。このような姉(B)に対して私(A)と妹(C)はどのような請求ができるのでしょうか?

まず,考えられるのは不動産の明渡の請求です。
この場合,判例上,姉(B)には家に対する使用貸借が認められる可能性があります。共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の承諾を得て相続財産である建物に被相続人と同居していた場合に,「特段の事情のない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになる」と判断し,使用貸借の成立を認めています(最高裁平成8年12月17日)。
そのため,姉(B)に対して,家からの退去を求めることは難しい可能性があります。
次に,金銭請求の可否です。
家を無償使用している姉が,質問者の相続分に係る部分を占有し,使用していることが,違法,あるいは法律上の原因がないとして,不法行為に基づく損害賠償請求又は不当利得返還請求をすることが考えられます。この場合の,損害金額あるいは利得した金額は,賃料相当額をもとに算定されることが多いです。
ただし,この場合についても,上記判例のように姉(B)に対して使用貸借等が認められる場合には,姉(B)の家の使用は権原に基づくものになるため,賃料相当分の不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償は請求できません。

4 老親の扶養・介護と遺産分割について

「1」 母親の遺産分割協議において,長女が父親の介護をすることを条件に長女に遺産の全てを取得させましたが,長女は父親の面倒を見ていません。このような遺産分割協議のやり直しや解除はできますか?

判例は,父親の面倒を見なかったことを理由にした遺産分割協議の債務不履行解除(民法541条)を認めていません(最高裁平成元年2月9日)。遺産分割協議について,債務不履行解除を認めてしまうと法的安定性が害されるとされているからです。

「2」 母親の遺産分割協議において,長女が父親の介護をするという約束で父親が相続すべき相続財産のすべてを長女が取得することになりました。しかし,長女は父親の介護をほとんどしていませんでした。このような事情を,父親の遺産分割協議の時に考慮することはできますか?

困難だと思われます。
母親の遺産分割において,父親が相続すべき相続財産のすべてを長女に取得させたことが父親から長女への贈与として,特別受益の主張をすることが考えられます。
しかし,母の遺産分割において父がその法定相続分相当を実質的に放棄して長女に取得させたとしても,それをもって「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた」とは言い難いため,形式的に民法903条1項の条文に該当するとは言いにくいと思われます。
なお,遺留分減殺請求訴訟の事案ですが,亡父の遺産分割において,母から法定相続分の2分の1を譲り受けた相続分の譲渡について,この相続分の譲受が特別受益に当たると判断した裁判例があります(東京高等裁判所平成29年7月6日)。

「3」 死んだ父親の遺言には,自宅を長男に相続させる旨の遺言がありました。そして,遺言には,「長男が母親と同居して,扶養し,食事などにも気を遣い,その他の身の回りの世話をして,母親にふさわしい老後が送れるように妻と最善の努力をすること。」とも書いていましたが,現在,長男と妻は,母親の世話を全くしていません。このような遺言は有効なのでしょうか?  

まず,このような抽象的な書き方をされた遺言が負担付遺言といえるのかを検討する必要があります。
東京地方裁判所昭和59年8月31日の裁判例は,負担付死因贈与の取消が争われた事案ですが,死因贈与は「性質に反しない限り,遺贈に関する規定を準用する。」(民法554条)とされているため,その負担に関する判断は,負担付遺贈についても参考になります。
被相続人と同居するという負担付死因贈与がされ,その負担の履行の有無が争われた事案の裁判例ですが,「被告は、原告がA(被相続人)と同居することは、負担付贈与契約における負担といえるものではない旨主張するが、従前居住していた住居を引き払って、肝臓に持病を持つ老令者と同居し、その身の回りの世話をすることは、これをもつて負担付贈与契約における負担とみることに何ら支障のないものというべきである」と判断されています。そのため,単に抽象的であるという理由で負担ではないとはいえません。ただし,負担の内容が公序良俗に反する内容であったり,身分行為に関する内容であったりする場合には,その負担は無効となります。
本質問の場合は,長男が具体的にどのような扶養・介護を行うかが記載されているため,負担付の遺贈に該当すると考えられます。
次に,負担が履行されない場合,負担付遺贈における負担は,遺贈の条件ではないため,その履行の有無にかかわらず,遺贈の効力は発生します。そのため,負担が履行されないことをもって当然に遺贈の効力が失われるわけではありません。
しかし,相続人が,負担を履行すべき義務者に対して,相当の期間を定めて履行するように催告でき,相続人の催告にもかかわらず,義務が履行されない場合に,相続人は家庭裁判所に対して遺贈の取消を請求できます(民法1027条)。
ただし,抽象的な義務の場合,履行の有無の判断は難しくなります。
本質問についても,長男が具体的にどのような介護や扶養を行ったかで履行の有無が判断されることになります。履行の有無がないと家庭裁判所が判断すれば,遺贈が取り消されることになります。遺贈が取り消された場合,その目的物は相続人に帰属することになります。

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損害賠償(遺産着服の場合)

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「1」 相続人の一人が被相続人名義の預貯金を使い込み・横領しているみたいなのですが,遺産を使い込んだ相続人に対して返還を求めることはできますか?

できる場合があります。
被相続人の遺産である預貯金の使い込みは,不当利得返還請求あるいは損害賠償請求という形で返還を求めることが考えられます。

「2」 使い込み・横領された金額全ての返還を求めることはできますか?

返還を求める方の相続人の法定相続分相当の金額について返還を求めることができます。

「3」 使い込み・横領をした相続人に対して,その返還を求める方法にはどのようなものがありますか?

返還を求める方法としては,①示談交渉(話し合い),③民事調停,③損害賠償・不当利得返還請求訴訟などが考えられます。
なお,家庭裁判所での遺産分割調停においても,これを調停内で扱うことに当事者全員の合意があれば,遺産の使い込み・横領を争点として扱ってもらうことはできますが,相続人間で協議がつかない場合には,使い込み・横領の部分を除いて,遺産分割の調停・審判の手続きを進めることになります。

「4」 使い込み・横領をした相続人に対して,返還請求をするにあたって準備すべきことは何ですか?

①使いこみ・横領をした人の特定,②使い込まれた金額の確定に必要な資料が必要となります。
使いこみ・横領をしたと思われる相続人と預貯金の不正な引き出しを行った人物が同一人物であることを確認する必要があります。
引き出しが行われている金融機関の店舗・ATMの場所と使いこみ・横領をしたと思われる相続人の住所や職場と距離的に矛盾しないか等を検討します。
また,金融機関から被相続人名義の口座の取引履歴を取得してください。
取引履歴を取得出来たら,引き出し金額を日付ごとにピックアップし,遺産の使いこみ・横領とそうではない正当な支出・経費を区別していきます。
被相続人自らが出金した,被相続人が引き出しを同意した,被相続人の介護費用に充てたなどの反論が考えられますので,引き出し当時の被相続人の意思能力の問題,生活状況などを検討することが重要となります。

「5」 不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求をするのに時効がありますか?

損害賠償請求と不当利得返還請求では,請求できる期間(時効)等が異なります。不法行為に基づく損害賠償請求は,引き出しによる損害及び加害者を知ったときから3年間しか請求ができません。
不当利得返還請求の場合は,引き出しの日から10年間返還請求ができます。

「6」 貴事務所では相続人による相続財産の使いこみ・横領に対する損害賠償請求などを扱ったことがありますか?

はい。当事務所でも,これまでに遺産の使い込み・横領に関する返還請求にあたっての示談交渉,裁判を取り扱ってきました。

※遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲に関する改正について(施行は2019年7月1日)
・従前,共同相続人の一人が遺産の共有持分を処分した場合,その後の遺産分割においてどのように処理すべきかについて明文の規定はありませんでした。
 このような場合,共同相続人全員の同意を得ることで処分された財産が遺産として存在するものとみなすというのが裁判所の運用でしたが,今回の改正でこの運用を明文化されました(民法906条の2)。但し,処分をした相続人については,同意を得る必要はありません(同条第2項)。

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遺言書作成

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「1」 遺言・遺言書とはなんですか?

遺言とは,遺言者の死亡とともに,遺言者が生前にした意思表示どおりの効力を発生させて,その最終意思の実現を図るための行為をいいます。
遺言書は,遺言者の最後の意思表示を書面にしたものです。

※相続の効力等に関する改正について(施行は2019年7月1日)
改正前,相続させる旨の遺言等により承継された財産については,対抗要件の具備なくして第三者に対抗することができるとされていました。
しかし,遺言の有無及び内容を知り得ない相続債権者・債務者等の利益を害することから,相続による権利の承継は,法定相続分を超える部分について対抗要件を具備しなければ第三者に対抗することができないとの規定が新設されました(民法899条の2第1項)。
なお,相続させる旨の遺言等により承継された財産が債権の場合は,従前の対抗要件具備の方法に加えて,受益相続人による被相続人の債務者に対する単独通知によっても第三者に対抗することができるものとされました(民法899条の2第2項)。

「2」 遺言書にはどのような種類がありますか?

遺言書には,大きく分けて①普通方式と②特別方式の2種類があります。
①普通方式の遺言書
 ・自筆証書遺言(民法967条)
 ・公正証書遺言(民法969条)
 ・秘密証書遺言(民法970条)
②特別方式の遺言書
 ・危急時遺言
 (一般危急時遺言:民法976条,難船危急時遺言:979条)
 ・隔絶地遺言
 (伝染病隔離者遺言:民法977条,在船者遺言:民法978条)

「3」 自筆証書遺言を作成するメリットは何ですか?

一人で作成できるため,手軽であり,また,何度書き直しても費用がかかりません。
さらに,他人に知られることなく作成することができます。

「4」 自筆証書遺言を作成するデメリットは何ですか?

遺言書に不備があれば遺言自体が無効になることがあります。
そのため,後の紛争を避け,できるだけ遺言を確実なものとするためには,公正証書遺言によることをおすすめします。

「5」 自筆証書遺言作成の際の注意点を教えてください。

遺言者が,全文、日付,及び氏名を自書し,印を押すことで完成します。

※ 自筆遺言証書の様式の緩和に関する改正について
自筆証書遺言の財産目録について様式の緩和に関し,法律が改正されています(施行は平成31年1月13日)。
今回の改正を踏まえても,遺言書本体ついては,手書き作成の必要がありますが,新しい法律では,遺言書に添付する財産目録については,手書きの必要がなくなり,パソコンでの作成や通帳のコピーなどの添付で足りることになりました。但し,添付書類には,すべてのページに署名・押印を要します。自書によらない記載が片面にある場合はロ油面に署名押印する必要があります。また,財産目録は,本文とは別の用紙で作成する必要があります。
なお,保管状況等から,本文が記載された用紙と財産目録が記載された用紙とが一体のものと認められる必要があります。


「6」 自筆証書遺言を書き換えるにはどうしたらいいですか?

自筆証書の書き換えは,遺言者が,その場所を指示し,これを変更した旨を付記して特にこれに署名し,かつ,その変更の場所に印を押すことにより,行う必要があります。
なお,財産目録の書き換えについても,同様の方法で行う必要があります。(968条3項)。

「7」 自筆証書遺言の一部にパソコンやワープロによる印字や代筆があった場合,その遺言は有効ですか?

無効です。
自筆証書遺言の「自書」という要件は,文字通り遺言者が全ての部分を自分で書くことをいいます。これは,遺言書の偽造・変造を予防し,遺言者の真意に基づき作成されたものであることを担保することが目的になっています。

※ 但し,本ページ「5」の内「自筆遺言証書の様式の緩和に関する改正について」参照  

「8」 手の力が弱く,遺言書を書く際に他人の手を添えて作成した遺言書は無効ですか?

有効になる場合もあります。
自筆証書遺言を作成するには,自書能力(文字を知り,かつ,これを筆記する能力)が必要になりますが,判例は「病気,事故その他の原因により視力を失い又は手が震えるなどのために,筆記について他人の補助を要することになったとしても,特段の事情のない限り,右の意味における自書能力は失われない」としています(最高裁判所昭和62年10月8日)。
そして,同判例は,「遺言者が証書作成時に自書能力を有し,他人の添え手が,単に始筆若しくは改行にあたり若しくは字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか,又は遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされており,遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけであり,かつ,添え手が右の態様のものにとどまること,すなわち,添え手をした他人の意思が介入した形跡のないことが,筆跡のうえで判定できる場合には,「自書」の要件を充たすものとして」有効であると判断しています。
ただ、このような作成の方法は,後に遺言の有効性を争われる可能性も高いので,公正証書遺言等を作成した方が良い場合もあるでしょう。

「9」 自筆証書遺言に押印する印鑑は実印でなければいけませんか?

自筆証書遺言に使用すべき印鑑には,特に制限はないため,実印である必要はなく,いわゆる三文判や認印でも問題はありません。本文に押された印と別の印でも問題ありません。
また,判例上,指印でもよいとされています(最判平成元年2月16日)。
押印の場所も,法律上規定されていませんが,署名の名下にするのが通常とされています。
自筆証書遺言は,その規定された方式で作成されないと無効になってしまう可能性もありますので,作成の際には,弁護士に相談をすることをおすすめします。

「10」 自筆遺言証書の日付は「〇年〇月吉日」という記載でも有効ですか?

無効です。
自筆証書遺言に日付の自筆が要求されるのは,作成時に遺言作成に必要な遺言能力の有無を判断するとともに,複数の遺言がある場合にその先後を決定するためです。
そのため,暦日の記載がなくとも,「平成〇年敬老の日」や「満〇歳の誕生日」といったように,日までが特定できる記載であれば有効になります。
「〇年〇月」や「〇月〇日」といったように年や日の記載がない自筆証書遺言は無効となります。

「11」 自筆証書遺言作成後,注意するべき点はありますか?

作成者の責任で遺言書を管理・保管しなければいけないことです。
そのため,遺言者が亡くなった時点で紛失してしまっている可能性もあります。また,遺言を何者かに偽造・変造される可能性もゼロではありません。

※ 自筆証書遺言の保管に関する改正について
自筆証書遺言の保管に関し,法律が改正されています(施行は平成32年7月10日)。新しい法律では遺言の原本は法務局に保管されことが認められ,従前,自筆証書遺言に必要であった検認手続きの必要がありません。但し,遺言を預ける際,遺言者本人が法務局に行き,担当職員と面談の必要があります。

「12」 公正証書遺言を作成するメリットは何ですか?

公証人が作成に関与するため,自書ができない人でも遺言書を作成できるとともに,その効力が問題になることも少ないです。しかし,遺言が無効とされることを防ぐことができることを考えると費用対効果は良いとも言えます。
また,原本は公証人役場で,保管されるため遺言書の偽造・変造・紛失のおそれもありませんし,自筆証書遺言のように家庭裁判所の検認の手続きも不要となります。

「13」 公正証書遺言作成の際のデメリットは何ですか?

公正証書遺言作成には手数料がかかります。
また,作成にあたっては最低2名の証人の立ち会いが必要なため,秘密にしておきたい遺言の内容を証人,ひいては証人を通じて利害関係人に知られる可能性がゼロとは言えないことです。

「14」 その他,遺言書作成に当たって注意すべき点はありますか?

遺言書作成にあたり注意すべき点は以下の通りです。
①共同遺言の禁止
 民法は,2人以上の人が一つの遺言書で遺言をする共同遺言を禁止しています。
 遺言は,遺言者の自由な独立した最終意思でなされるべきであるため,共同遺言では他人の意思の影響を受けるおそれがあるからです。
②遺言能力
 遺言は満15歳に達しないと作成できません。
 作成時に遺言の内容を理解し,その結果を弁識しうるに足りる意思能力が必要とされています。
 また,成年被後見人であっても,事理を弁識する能力を一時回復した時には,医師2人以上の立ち会いがあれば遺言書の作成ができます。
③後遺言優先の原則
 内容が抵触する日時を異にした前後2個の遺言がある場合には,後の日付の遺言が優先します。
 ここでいう「抵触」とは,前の遺言を失効させなければ後の遺言の内容を実現することができない程度に内容が矛盾していることをいいます。
 後の日付の遺言が前の日付の遺言に条件をつけたものであったり,前後の遺言が相互に全く無関係であったり,両立するものは有効になります。

※遺贈義務者の引渡義務の改正について(施行は2019年7月1日)
改正前,不特定物を遺贈の目的とした場合,①受遺者がこれについて第三者から追奪を受けたときは,遺贈義務者は,これに対して売主と同じ責任を負い,②物に瑕疵があったときは,遺贈義務者は,瑕疵の無い物をもってこれにかえなければならないとされました(旧民法998条)。
また,遺贈の目的である物・権利が遺言者の死亡の時において第三者の権利の目的であるときは,受遺者は,遺贈義務者に対しその権利を消滅させるべき旨を請求することができないとされていました(旧民法1000条)。

しかしながら,今回の債権法の改正で,贈与者の担保責任について,贈与者は,
贈与の目的である物(特定物か不特定物であるかを問いません)・権利を,贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し,又は移転することを約したものと推定する規定が設けられました(民法551条1項)。
そこで,遺贈についても,贈与の担保責任に関する規律に従い,遺贈義務者は,遺贈の目的である物や権利を,相続開始時の状態で引渡し,又は移転する義務を負うとされました(民法998条)。
そして,民法998条によれば,遺贈の目的物である物・権利が遺言者の死亡の時に第三者の権利の目的であっても,原則そのままの状態で引き渡せばよいことから,旧民法1000条の規定は不要となったので,削除されました。

※遺言執行者の権限等に関する改正について(施行は2019年7月1日)
・改正前,遺言執行者がいる場合に,相続人がこれを知る手段が確保されていませんでした。そこで,遺言執行者は,その任務を開始したときは,遅滞なく,遺言の内容を相続人に通知しなければならない,との規定が新設されました(民法1007条2項)
・改正前,遺言執行者の有する権利義務について,その目的が明らかではありませんでした。そこで,「遺言の内容を実現するため」の文言を追加して,遺言執行者は,遺言の内容を実現するため,相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有するものとされました(民法1012条第1項)。
また,受遺者による遺贈の履行請求の相手方を明確にする観点から,遺言執行者がある場合には,遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことができるとの規定が新設されました(民法1012条第2項)。
・改正前の民法1013条及び判例によると,遺贈がされた場合について,遺言執行者があれば遺贈が絶対的に優先し対抗関係が生じないのに対し,遺言執行者がなければ対抗関係に立つことになるのですが,これでは,遺言の存否および内容を知り得ない第三者に不測の損害を与え,取引の安全を害するおそれがありました。
そこで,旧民法1013条「遺言執行者がある場合には,相続人は,相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」との規定を1013条1項として,遺言の内容を知り得ない第三者の取引の安全を図る観点から,善意の第三者を保護するために,「前項の規定に違反してした行為は,無効とする。ただし,これをもって善意の第三者に対抗することができない。」旨の規定を新設しました。なお,この場合の保護要件については,第三者に遺言の内容に関する調査義務を負わせるのは相当でないことから,善意であれば足り,無過失は要求されていません(民法1013条2項)。
・上記1013条2項が新設されたことにより,遺言執行者がいる場合には,相続人の債権者及び相続債権者が保護されるためには善意である必要があるという解釈が生じる余地があります。しかし,被相続人の遺言によって,相続人の債権者及び相続債権者が権利行使に時間・労力を要してしまうのは相当でないことから,相続人の債権者及び相続債権者が相続財産についてその権利を行使することを妨げないとの規定が新設されました(民法1013条3項)。
・従前,対抗要件具備行為について,遺言執行者の権限であるかどうか明文の規定がありませんでしたが,対抗要件具備行為は,受益相続人にその権利を完全に移転させるために必要な行為といえることから,「遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(特定財産承継遺言」)があったときは,遺言執行者は,当該共同相続人が対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる」との規定が新設とされました(民法1014条2項)。
なお,改正法の下でも,受益相続人が単独で登記申請することは妨げられません。
また,特定の財産が預貯金債権である場合には,「遺言執行者は,当該共同相続人が対抗要件を備えるために必要な行為のほか,その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。」との規定が新設されました。但し,「解約の申入れについては,その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。」こととしています(民法1014条3項)。
・改正前,遺言執行者は相続人の代理人とみなされていましたが,権限を明確化する観点から,遺言執行者であることを示してした行為は,相続人に対して直接に効力を生ずるものと改正されました(民法1015条)
・改正前,遺言執行者の復任権について,やむを得ない事情がなければ第三者にその任務を行わせることができませんでした。しかし,遺言執行者には十分な律知識を有していない者が指定されることも多く,遺言執行者の復任権の要件を緩和すべきであるとの要請がありました。
そこで,「遺言執行者は,自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし,遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは,その意思に従う。」と改正し要件が緩和されました(民法1016条1項)。この場合,第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは,遺言執行者は,相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負います(民法1016条2項)。

※義務の承継に関する改正について(施行は2019年7月1日)
・旧民法は,902条で「相続人は,遺言で,共同相続人の相続分を定め,又はこれを定めることを第三者に委託することができる」と規定しているのみで,相続債務が存在する場合の規律については条文上明らかではありませんでした。そこで,判例法理に従い,「遺言により相続債務について相続分の指定がされた場合であっても,相続債権者は,各共同相続人に対し,法定相続分に応じた債務の履行を請求することができる」との規定が新設されました。なお,相続債権者側から,指定相続分に応じた義務の承継を認めることもできます(民法902条の2)。

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遺産分割

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「1」 遺産分割とはなんですか?

亡くなった方(これから先は,「被相続人」といいます。)の相続財産の中の個々の財産を各相続人に帰属させることをいいます。

「2」 遺産分割をしないとどういう状態になりますか?

相続人が複数人いる場合には,遺産分割をしないと,被相続人の相続財産は,相続人全員が権利を有する状態になります(これを「遺産共有」といいます。)。

「3」 遺産分割の手続にはどのような方法がありますか?

遺産分割には,①(遺言による)指定分割,②協議分割,③裁判所を通しての分割(調停・審判)の3種類があります。

「4」 指定分割とはどういう分割の方法ですか?

被相続人が、遺言で相続財産の分割を指定する方法をいいます。不動産は妻に、預貯金は長男に、といった具体的な分割の指定もあれば、相続財産の全てを妻に、といった抽象的な指定の方法もあります。

「5」 協議分割とはどういう分割の方法ですか?

相続人全員で話し合い相続財産の分割方法を決定する方法です。話し合い(協議)が成立するためには、相続人全員の合意が必要です。

「6」 裁判所を通しての分割(調停・審判)とはどういう分割の方法ですか?

調停・審判とも,家庭裁判所を介する遺産分割の方法ですが,調停は相続人全員の合意がなければ成立しません。家庭裁判所に場を設けた協議分割といえます。他方,審判は,家庭裁判所が遺産の分割方法を決めます。
分割の仕方について相続人全員の合意が得られない場合,または協議に参加しない相続人がいるなど協議ができない場合には,家庭裁判所に遺産分割の審判を申し立てることができます。
法律上,相続人は,調停・審判どちらの申立てもすることができます。しかし,実務上は,調停を経ずに審判の申立てを行うと,家庭裁判所の職権によって調停にまわされることがほとんどです。
これは,遺産分割事件も,やはり家族・親族の問題であるため,まずは話し合いでの解決を図ることが望ましいと考えられているからです。
そのため,家庭裁判所での遺産分割は,調停での話し合い,調停が成立しなかった場合に審判,と2段階の構成になっています。

「7」 遺産分割に相続人全員が揃っていなかった場合,その分割は有効ですか?

原則無効です。
また,遺産分割成立後に他に相続人がいることが判明した場合も,その遺産分割は無効となり,新たに判明した相続人を加えて遺産分割をやり直す必要があります。
ただし,遺産分割後に死後認知により相続人の地位を取得した者がいる場合には,既になされた遺産分割は有効であり,死後認知による新たな相続人は,遺産分割のやり直しを求めることはできません。この場合,新たな相続人は,同順位の相続人に対して相続分相当額の支払を請求できます。新たな相続人は,他の相続人に対してその法定相続分の限度の価額の請求をすることができます。
また,相続人の一部の方が所在不明の場合には,家庭裁判所に「不在者財産管理人」(※)を選任してもらい,遺産分割の手続きを進める必要があります。

※不在者財産管理人とは,従来の住所又は居所を去り,容易に戻る見込みのない者(不在者)に財産管理人がいない場合に,不在者自身や不在者の財産について利害関係を有する第三者の利益を保護するため,家庭裁判所に選任された財産管理をする人物のことをいいます(民法25条1項)。
不在者財産管理人は,家庭裁判所の権限外行為許可を得た上で,不在者に代わって,遺産分割に加わることができます。

「8」 遺産の一部分割は可能ですか?

可能です。共同相続人は,協議で遺産の一部分割をすることができます(民法907条1項)。また,協議が整わない場合に,遺産の一部のみの分割を家庭裁判所に求めることができます(民法907条2項)。

「9」 遺産分割の具体的な方法(相続財産を分ける方法)にはどのようなものがありますか?

相続財産を分割する具体的な方法として,①現物分割,②代償分割,③換価分割という方法があります。

「10」 引渡しの現物分割とはどのような分割方法ですか?

現物分割とは,被相続人の相続財産を現物で相続人が分割する方法です。原則的な分割の方法ですが,各相続財産の価値や評価額に差がある場合には,公平な分配をすることは困難です。
【例】被相続人Xに妻A,長男B,長女Cの三人の相続人がおり,その相続財産が不動産2000万円,預金1000万円,株式500万円があった場合に,妻Aが不動産,長男Bが預金,長女Cが株式を現物のまま取得する。

「11」 代償分割とはどのような分割方法ですか?

代償分割とは,ある相続人にその相続分を超える遺産を現物で取得させる場合に,代わりにその相続人に,相続分に満たない遺産しか取得しなかった相続人に対する債務を負担させる分割方法のことをいいます。
債務を負担した相続人が代償金を支払わなかったとしても,遺産分割協議を解除してやり直すことはできません。そのため,実務では,代償金支払義務を負担する相続人に代償金支払債務の支払能力があることが要件となっています。
【例】被相続人Xの相続人が子のA及びBしかおらず,Xの相続財産が不動産2000万円,預金1000万円であり,Aが不動産,Bが預金を取得することになった場合を例に考えてみます。
ABの相続分はともに1/2であるため,本来であれば1500万円ずつの相続分があることになります。しかし,こ上記分割では,Aが500万円分相続分より多く(Bとしては500万円分相続分より少なく)取得することになります。AB間の不公平を解消するために,Aが不動産を取得する代わりに,Bに対して,500万円を支払う(AにBに対する債務を負担させる)ことで合意することになります。

「12」 換価分割とはどのような分割方法ですか?

換価分割とは,相続財産を売却してその売却代金を分割する分割方法のことをいいます。
【例】被相続人Xには相続人として長男A,長女Bがおり,その相続財産は,不動産2000万円,株式1000万円がある。ABともに不動産・株式を取得することを望んでいない。これらを売却して得た売却代金合計3000万円を分割することになります。

「13」 被相続人が遺言を作成していましたが,この遺言とは異なる内容の遺産分割をすることは可能ですか?

可能です。ただし,相続人全員が遺言の内容を知り,正しく認識をした上で,遺言の内容と異なる遺産分割協議を相続人全員で行った場合に限られます。
また,遺言の中に特定遺贈や「相続させる」旨の遺言(特定財産承継遺言)がある場合には遺言者の死亡と同時にその効果が発生し,その対象となった財産は相続財産から除かれるため,遺産分割と交換,贈与等を組み合わせて分割することになります。

「14」 遺産分割の効果はいつの時点から発生しますか?

遺産分割が成立すると,その分割の効果は,相続開始時に遡って効力が生じます。
ただし,相続開始から遺産分割成立までの間に相続財産である不動産から発生した賃料等は,遡って帰属しないとされています(最高裁判所平成17年9月8日)。
そのため,相続財産から発生した賃料等の法定果実は,以下のように扱われます。
①相続発生まで
 相続財産に当たるため遺産分割の対象になります。
②相続発生後から遺産分割成立まで
 相続財産には該当せず,別個の共有財産として各共同相続人がその相続分に応じて確定的に取得します。金銭債権のような可分のものであれば分割単独債権として,不可分のものであれば相続分に応じた共有となります。
 なお,この場合においても,相続人全員の同意があれば相続財産と一括して遺産分割の対象にすることができます。
③遺産分割成立以降
 遺産分割により賃料等の法定果実を発生させる相続財産を取得した相続人が取得します(民法89条2項)。

「15」 遺産分割後に,他にも遺産があったことが分かった場合,その遺産分割は有効ですか?

原則有効です。その場合,新たに判明した相続財産につき分割手続きを行うことになります。
また,漏れていた相続財産の存在が判明していれば,当初の遺産分割とは全く異なった遺産分割がなされていただろう場合など,遺産分割をやり直す必要が認められるような特別の事情がある場合には,先の遺産分割を無効としてやり直すこともあります。

「16」 預貯金の払戻し制度とはどのようなものですか?

遺産分割前に相続人が単独で相続預金の払戻しができる制度として,2つの制度が整備されています。

① 相続預金の一定限度まで,家庭裁判所の判断を経なくても金融機関の窓口における支払いを受けることができることになりました(民法909条の2)。但し,一つの金融機関から払戻しができるのは150万円までです。
  単独で払戻しをすることができる額=(相続開始時の預貯金債権の額)×1/3×(当該払戻しを行う共同相続人の法定相続分)
  なお,払戻しを受けた金員は,遺産の一部分割により取得したものとみなされます。
② 遺産分割の審判・調停前の保全処分として,相続預金の一部を相続人に仮に取得させる仮分割の仮処分を家庭裁判所に求めることは,制度上可能ではありました。しかし,「急迫の危険を防止する必要があるとき」という厳格な要件が課せられていたので,改正により「仮払いの必要性があると認められる場合」「他の共同相続人の利益を害しないこと」と要件が緩和されました(家事事件手続法200条3項)。
  なお,この場合,払戻しを受けた金員を含め,改めて遺産分割を行うことになります。

「17」 配偶者短期居住権とはどのような権利ですか?

相続開始時に無償で居住していた配偶者が遺産分割に関与する場合には,遺産分割によりその建物の権利の帰属が確定するまでの間,又は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間(つまり,最低,6カ月は居住できるということです。),引き続きその配偶者が無償で居住することができます(民法1037条第1項第1号)。
他方,遺贈などにより第三者が居住建物の所有権を取得した場合,居住建物の所有権を取得した者は,当該配偶者に対し配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができ,配偶者はその申入れを受けた日から6か月を経過するまでの間,引き続き無償でその建物を使用することができます(民法1037条第1項第2号)。

「18」 内縁関係の場合にも配偶者短期居住権は成立しますか?

成立しません。配偶者短期居住権が成立するためには法律上の配偶者である必要があります。

「19」 配偶者短期居住権が成立するためには一定の婚姻期間が必要ですか?

婚姻期間に関する要件は設けられていません。

「20」 配偶者居住権とはどのような権利ですか?

遺産分割の選択肢の一つとして,又は被相続人の遺贈等によって配偶者が居住する被相続人の所有建物を対象として,終身又は一定期間,配偶者にその使用又は収益を認めることを内容とする権利です(民法1028条1項)。

「21」 内縁関係の場合にも配偶者居住権は成立しますか?

成立しません。配偶者居住権が成立するためには法律上の配偶者である必要があります。

「22」 被相続人が賃借していた建物に配偶者が住んでいた場合にも配偶者居住権は成立しますか?

成立しません。相続開始時点で被相続人の財産に属した建物でなければ,配偶者居住権は成立しません。

「23」 被相続人が建物の共有持分を有していたにすぎない場合にも,配偶者居住権は成立しますか?

原則として成立しませんが,例外的に,被相続人と配偶者との共有であった場合には成立します(民法1028条1項ただし書)。

「24」 持戻し免除とはどのようなものですか?

婚姻期間が20年以上の夫婦の一方が,他方に対し,居住用建物又はその敷地を遺贈又は贈与した場合,遺産分割などにおいて,持戻しの免除の意思表示(民法第903条第3項)があったものと推定するとされています(民法第903条第4項)。

「25」 民法903条4項は,内縁関係の場合にも適用されますか?

適用されません。法律上の夫婦であった期間が20年である必要があり,事実婚の期間を含めることはできません。

「26」 民法903条4項が適用されるためには,婚姻期間が途切れることなく20年以上継続している必要がありますか?

結婚と離婚を何度か繰り返していて婚姻期間が途切れている場合であっても,婚姻期間が通算して20年以上となるのであれば,同条項が適用されると考えられます。

「27」 民法903条4項が適用されるためには,贈与等がされた時点で居住の用に供している必要がありますか?

原則として,贈与等がされた時点で居住の用に供している必要があります。ただし,贈与等がされた時点では居住の用に供していなかった場合でも,近いうちに居住の用に供する予定があった場合には,持戻しの免除の意思表示があったものと推定されます。

「28」 民法903条4項により,居住の用に供する建物又は敷地の贈与等について,持戻しの免除の意思表示があったものと推定された場合,配偶者にはどのような利益があるのですか?

遺産分割において,居住用建物及び敷地の価額を特別受益として扱わなくてよくなるので,配偶者がもらうことができる額が増えるという利益があります。

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寄与分・特別受益

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寄与分について

「1」 寄与分とは何ですか?

寄与分とは,共同相続人中に,被相続人の財産の維持や増加について特別の寄与をした者がいる場合,その寄与を評価して,特別の寄与をした相続人の相続分を増加させる制度を言います。

※相続人以外の者の貢献を考慮するための規定新設について(施行は2019年7月1日)
・改正前は,寄与分は相続人にのみ認められ,相続人以外の者の貢献を考慮する制度はありませんでした。しかし改正法は,被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(六親等内の血族,配偶者,三親等内の姻族)を「特別寄与者」として,特別寄与者は,相続開始後,相続人に対し,特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払いを請求することができるものとの規定を設けました(民法1050条1項)。
・特別寄与料の支払について,当事者間に協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,特別寄与者は,家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます。但し,特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月を経過したとき,又は相続開始の時から1年を経過したときは請求することはできません(民法1050条2項)。

「2」 寄与分を受けることができるのは共同相続人に限られますか?

はい(民法第904条の2第1項)。
共同相続人でない包括受遺者は,相続人と同一の権利義務を有しますが(民法第990条),共同相続人ではない以上,寄与分を認めないのが多数説です。
他方,共同相続人である以上,代襲相続人には寄与分が認められます。この場合,代襲相続人は,被代襲者の寄与分だけでなく,自らの特別の寄与分も 主張することができます。
以下,登場人物として,被相続人を甲,甲の子をA,Aの子(甲の孫)をaとして代襲相続人と被代襲者を説明します。
※代襲相続人:被相続人が死亡する前に,被相続人の子や兄弟姉妹が,死亡・欠格・廃除によって相続権を失った場合の,その者(被相続人の子や兄弟姉妹)の子
 EX. 甲が死亡する前にAが死亡した場合のa
※被代襲者:被相続人が死亡する前に,被相続人の子や兄弟姉妹が,死亡・欠格・廃除によって相続権を失った場合の,その者(被相続人の子や兄弟姉妹)
 EX. 甲が死亡する前にAが死亡してaが代襲相続人となった場合のA

「3」 相続人の配偶者(被相続人の子の配偶者)や子供(被相続人の孫)の寄与を考慮することはできませんか?

共同相続人でない以上,寄与分を主張することはできません。
但し,相続人と共に,被相続人の財産の維持・増加に貢献した場合には,相続人の履行補助者による寄与として,その相続人自身の寄与にあわせて,これらの者の寄与を主張することができるとするのが実務です。
履行補助者による寄与とは,相続人の寄与と同視することができるような寄与を言い,具体例としては,被相続人を甲,甲の子をA,Aの子をa,Aの配偶者をXとすると,
① 甲は,生前,自家営業と営み,Xは,無報酬でAと共に家業に従事して,甲の財産の維持・増加に貢献した
② aとXは,Aを補助・代行し,甲を長期にわたり看護・介護をして,甲の財産が減少するのを防いだ
などのような場合です。

「4」 被相続人の財産の維持・増加に貢献する相続人の寄与行為にはどのようなものがありますか?

① 被相続人の事業に関する労務の提供や財産上の給付
  EX. 農業や家業など被相続人の事業に相続人が従事して労務を提供した場合
  EX. 被相続人の事業のために,資金を提供したり債務を弁済した場合
② 被相続人の療養看護
  EX. 相続人が被相続人の療養看護に従事した場合や療養看護の費用を 負担した場合
③ その他の方法によりなされた被相続人の財産の維持・増加についての特別の寄与
  EX. 被相続人所有の不動産の賃貸管理や維持・修繕,公租公課の負担など財産管理行為によって,不動産の維持・増加に寄与した場合
  EX. 被相続人に対し,生活費や不動産維持費用を支弁し続け,結果,不動産を処分せずに済んだ場合

「5」 「特別の寄与」とはどのような寄与のことですか?

被相続人と相続人との身分関係において,通常期待される程度を超える貢献であること,寄与行為に対して,これに見合う相当な対価が支払われていないこと,が必要です。
通常期待される程度を超える貢献とは,夫婦であれば夫婦間の協力扶助義務(民法752条)や,直系血族・兄弟姉妹であれば,それらの間の扶養義務(民法877条1項)に基づく通常の相互扶助の程度を超えた貢献を言います。

「6」 寄与分の額に上限はありますか?

寄与分の額は,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができません(民法第904条の2第3項)。よって,遺産全部が遺贈された場合には,寄与分は認められず,寄与をしたとされる者は,遺贈を受けた者に対し,遺留分のみが主張できるにとどまります。

「7」 寄与分はどのようにして定まりますか?

寄与分は,共同相続人間の協議で定めることができます。
共同相続人間の協議が整わない場合や協議ができない場合は,家庭裁判所に対し,寄与をした相続人は,寄与分を定める処分調停の申立て,又は寄与分を定める処分審判の申立てをして,家庭裁判所が寄与分を定めます。
寄与分を定める調停の申立は,寄与分を定める調停の申立てのみすることができます。これに対し,寄与分を定める審判の申立は,遺産分割審判の申立又は相続の開始後に認知された者の価額支払請求(遺産分割終了後に認知されて相続人となった者について,相続分に応じた価額の支払いを求める請求)があった場合にのみすることができます。
但し,実務では寄与分のみにかかわる調停,審判の申立をすることは少ないと思われます。

「8」 寄与分がある場合,具体的な相続分はどのように算定されますか?

以下の計算式で算定されます。
1.相続財産の価額から寄与分額を控除し,これをみなし相続財産とする
2.みなし相続財産に各相続人の法定相続分(相続分が遺言により指定されていた場合は,その相続分)を乗じる
3.寄与をした者について,2.の額に寄与分額を加算する。
具体例で説明すると,相続人が配偶者と子2人(A・B),相続財産が4000万円,Bに1000万円の寄与分が認められた場合の各人の具体的相続分は,
みなし相続財産 4000万円-1000万円=3000万円
各相続人の具体的相続分は,
配偶者 3000万円×1/2=1500万円
 子A  3000万円×1/4=750万円
 子B  3000万円×1/4+1000万円=1750万円
となります。

「9」 事務所では寄与分に関する事件を担当した経験はありますか?

あります。

特別受益について

「1」 特別受益とは何ですか?

特別受益とは,被相続人から共同相続人に対して遺贈された財産,及び,婚姻や養子縁組のため,もしくは生計の資本として贈与された財産を言います。
共同相続人の中に,被相続人から遺贈や生前贈与を受けた者がいる場合,現に存在する遺産のみを対象として法定相続分や指定相続分に従って遺産分割をしたのでは,共同相続人間の公平を欠くことになります。
そこで,遺贈や生前贈与は相続分の前渡しと考え,相続財産に加算して(特別受益の持戻し)各相続人の具体的相続分を算定するのが特別受益の制度です。

「2」 被相続人から贈与を受けた場合の他に,特別受益として遺産分割を処理する場合がありますか?

被相続人の預貯金について,相続人の一人が預金を出金した場合,その相続人に贈与されたのか,その相続人が無断で出金したのか明らかでないこともあります。このような場合でも,実務では,出金した相続人以外の相続人が,贈与として扱うことに合意し,出金した相続人に対しては特別受益の扱いとすることも少なくありません。

「3」 被代襲者が被相続人から特別な利益を受けていた場合,代襲相続人はこの特別な利益を持ち戻さなければなりませんか?

代襲者は,被代襲者の地位を代襲して取得するものゆえ,持ち戻さなければならないとするのが通説的見解です。

「4」 被相続人から特別な利益と受けた者が,後に,婚姻や養子縁組により推定相続人となった場合,この者はこの特別な利益を持ち戻さなければなりませんか?

持ち戻す必要があるとするのが通説的見解です。

「5」 相続人以外の者が被相続人から包括遺贈を受けた場合,包括受遺者はこれを持ち戻さなければなりませんか?

持ち戻す必要があるとするのが通説的見解です。

「6」 相続人の配偶者や子が被相続人から特別な利益を受けていた場合,これらの者はこの特別な利益を持ち戻さなければなりませんか?

持ち戻す必要はありませんが,実質的には被相続人から相続人が直接利益を受けたものと異ならないとみられるときには,持ち戻しの対象となる可能性もあります。

「7」 特別受益はどのようにして定まりますか?

判例により,ある財産が特別受益財産にあたるかどうかは,遺産分割申立事件,遺留分減殺請求に関する訴訟など具体的な相続分又は遺留分の確定を必要とする審判事件又は訴訟事件における前提問題としてのみ審理判断されます。

「8」 持戻し免除とは何ですか?

被相続人が,持戻しを免除するという意思を表示した場合には,特別受益を相続財産に加算しないとする制度です。
遺贈についての持戻しの免除の意思表示は遺言の方式によらなければなりませんが,贈与についての持戻しの免除の意思表示は,特別な方式は要求されておらず,明示・黙示を問いません。
なお,持戻しの免除が他の共同相続人の遺留分を害する場合,持戻し免除が無効となるものでなく,遺留分を侵害された相続人が減殺請求権の余地があるに過ぎないとするのが判例です。

「9」 特別受益がある場合,具体的な相続分はどのように算定されますか?

以下の計算式で算定されます。
1.相続財産の価額に特別受益たる贈与の総額を加算し,これをみなし相続財産とする
2.みなし相続財産に各相続人の法定相続分(相続分が遺言により指定されていた場合は,その相続分)を乗じる
3.特別受益を受けた者について,2.の額から特別受益額を控除する。
具体例で説明すると,相続人が配偶者と子2人(A・B),相続財産が4000万円,Bに1000万円の特別受益があった場合の各人の具体的相続分は,
みなし相続財産 4000万円+1000万円=5000万円
各相続人の具体的相続分は,
 配偶者 5000万円×1/2=2500万円
 子A  5000万円×1/4=1250万円
 子B  5000万円×1/4-1000万円=250万円
となります。

「10」 事務所では特別受益の主張をした経験はありますか?

あります。

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相続放棄・遺留分放棄・相続欠格,廃除

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相続放棄について

「1」 相続放棄とは何ですか?

相続人が,被相続人の権利や義務を一切受け継がないようにする制度です。

「2」 どのような場合に相続放棄がなされますか?

被相続人の借金などの消極財産が積極財産を上回る場合,相続放棄をして,被相続人の消極財産の支払義務を負わないようにするためになされるのが一般的です。

「3」 相続放棄はいつまでにすればいいのですか?

自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に,家庭裁判所に放棄することを申述して行います。なお,相続開始前に相続放棄をすることはできません。
また,最高裁判所昭和59年4月27日判決によると,「相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが,相続財産が全く存在しないと信じたためであり,かつ,このように信ずるについて相当な理由がある場合には,民法915条1項所定の期間(3か月)は,相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算する」とされています。よって,被相続人が亡くなったことを知ってから3か月を経過した後に,被相続人に多額の債務があることを被相続人の債権者からの連絡で知ったような場合は,債権者からの連絡で知ってから3か月以内であれば,相続放棄ができる可能性がありますので,あきらめないで下さい。

「4」 相続放棄の効果はどのようなものですか?

相続放棄をした者は,その相続に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなされます。放棄をした者について存在しなかったものと考えればよく,放棄をした者の子も相続することはできません。

「5」 相続放棄は,相続分や相続人の範囲に影響しますか?

影響します。
例えば,相続人が配偶者と子2人(A・B)の場合,相続分は配偶者が1/2,Aが1/4,Bが1/4ですが,配偶者が相続放棄をするとA・Bの相続分はお各々1/2となります。
また,上記の例で,子A・Bも相続放棄をすると,被相続人に父母がいれば,第2順位の父母が相続人となり,又,父母が既に亡くなっていて被相続人に兄弟姉妹がいれば,第3順位の兄弟姉妹が相続人になります。亡くなった人に多額の債務があった場合には,配偶者と子が相続放棄をする可能性が大きいので,被相続人の両親や兄弟姉妹も相続放棄を念頭に入れる必要があります。なお,この場合も,相続放棄ができる期間は,「相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から3か月以内」です。とは言え,事実上は,先順位の相続人が相続放棄をしたことを知ってから3か月以内になることが多いと思われます。

「6」 相続放棄をする期間を延長することはできますか?

3か月の期間が経過する前であれば,相続財産の有無やその状況を調査するため,家庭裁判所に対して,相続放棄をするための期間延長を請求し,家庭裁判所が審判により期間を伸長することができます。

「7」 相続財産の一部を処分してしまいましたが,被相続人の財産が債務超過の状況でしたので,相続放棄をしたいのですが,できますか?

相続人が,限定承認(相続人が遺産を相続するときに相続財産を責任の限度として相続すること)や放棄をする前に相続財産を処分すると,単純承認(被相続人の権利義務を承継することを相続人が無限定に承認すること)をしたとみなされます。よって,単純承認とみなされると相続放棄をすることができないことになりますが,相続の開始した事実を知らずになされた処分行為や葬祭費用として相続財産から支弁した場合など,単純承認とみなされない可能性もありますので,あきらめないで下さい。

「8」 事務所では相続放棄の申述の事件を担当した経験はありますか?

あります。相続放棄をする期間の伸長の措置をとった後に相続放棄の申述をした事例もあります。

遺留分放棄について

「1」 遺留分放棄とは何ですか?

相続権を失わずに遺留分権のみを喪失する制度です。
なお,遺留分権は相続権を前提としますので,欠格・廃除・相続放棄などで相続権を失った場合は当然に遺留分権を失います。

「2」 どのような場合に遺留分放棄がなされますか?

例えば,被相続人の生前に,多額の生前贈与を受けた相続人について,遺留分を放棄してもらうことがあります。
又,被相続人が死亡した後に,遺留分減殺請求をして相続人間で揉めるようなことをしてほしくないという被相続人の意思を尊重して,一部の遺留分権者が遺留分の放棄をすると言うことの意味もあります。

「3」 遺留分放棄はどのようにすればいいのですか?

被相続人の生前は,家庭裁判所に遺留分放棄の許可の申立てをし,家庭裁判所の許可を得ることによって放棄できます。家庭裁判所は,遺留分権利者の真に自由な意思に基づくものであるかどうか,かつ,その理由が合理性もしくは妥当性,必要性ないし代償性を具備しているかどうかを考慮して,許可するかどうか判断します。
他方,被相続人の死亡後は,自由に放棄することができ,裁判所の許可は不要です。

「4」 遺留分を放棄すると相続権も失いますか?

相続の放棄ではないので,相続開始後は相続人となります。

「5」 遺留分放棄によって,他の遺留分権者の遺留分は増えますか?

増えません。被相続人が自由に処分できる相続財産の範囲が増加するだけです。
例えば,相続人が配偶者と子2人(A・B)の場合,遺留分の割合は,配偶者が1/4,Aが1/8,Bが1/8ですが,AとBが遺留分を放棄しても,配偶者の遺留分は1/4のままで増加しません。但し,遺留分権者全体に残される遺留分の割合が,A・Bが遺留分を放棄する前は1/2(1/4+1/8+1/8)ですが,A・Bが遺留分を放棄した後は1/4となります。結果,被相続人が遺言によって自由に処分できる割合(遺留分の侵害を考慮しなくてもいい割合)が1/2から3/4に増加するのです。

「6」 事務所では遺留分放棄を担当した経験はありますか?

あります。

相続欠格・廃除について

「1」 相続欠格とは何ですか?

民法第891条に定める5つの事由(相続欠格事由)が相続人にある場合に,当該相続人の相続権を剥奪する制度です。

「2」 相続欠格事由には,どのような事由がありますか?

① 故意に,被相続人または先順位・同順位の相続人を死亡させ(未遂犯を含みます),
  刑に処せられた者
② 被相続人の殺害されたことを知って,告発・告訴しなかった者
③ 詐欺・強迫によって,相続に関する被相続人の遺言の作成・撤回・取消・変更を妨げ
  た者
④ 詐欺・強迫によって,被相続人に,相続に関する遺言の作成・撤回・取消・変更をさ
  せた者
⑤ 相続に関する被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者
なお,相続欠格は,法律上当然に相続権を剥奪するという強力な制度であることから,上記事由に該当するかどうかの判断については,厳格的になされることが多いです。

「3」 相続欠格者がいる場合の相続手続はどのようになるのですか?

ある相続人に相続欠格事由があることを証明する必要があります。
欠格者が欠格事由を認めている場合は,その者に欠格証明書を作成してもらいます。
欠格者が欠格事由を認めていない,または欠格証明書作成に協力してくれない場合は,民事訴訟(共同相続人全員が,相続人の地位を有しないことの確認を求める訴えを裁判所に提起して,判決を得る)で欠格事由の存在を確定させ,その判決書で証明します。
また,欠格事由が被相続人の生命侵害に関わる場合には,刑事裁判の判決書で証明します。

「4」 相続欠格の効果はどのようなものですか?

相続欠格事由が相続開始前に生じた場合はその時から,相続開始後に判明した場合は相続開始時に遡って,その者の相続資格が法律上当然になくなります。よって,欠格者が加わってなされた遺産分割協議は無効であり,審判による分割も無効となります。また,相続欠格者は遺贈を受けることもできません。
但し,相続欠格の場合に代襲相続が認められるので,欠格者に子があれば,欠格者に代わってその子が相続人となります。

「5」 相続人の廃除とは,何ですか?

被相続人が,ある相続人に財産を相続させたくないのももっともだと思われるような事由がある場合に,被相続人の意思に基づいて家庭裁判所がその相続人の相続権を剥奪する制度です。

「6」 廃除事由にはどのようなものがありますか?

① 被相続人に対して虐待をし,もしくは重大な侮辱を加えたとき
② 推定相続人にその他の著しい非行があったとき

「7」 廃除の手続はどのようなものですか?

被相続人が家庭裁判所に廃除を請求するか,遺言で廃除の意思を表示することによってされます。遺言による廃除の場合は,遺言執行者が被相続人死亡後遅滞なく廃除の請求を家庭裁判所に対してしなければなりません。

「8」 廃除の効果はどのようなものですか?

生前廃除の場合は,廃除の審判が確定したときから,遺言廃除の場合は,相続開始時に遡って相続権を失います。
ただし,相続欠格の場合と異なり,被廃除者は,被相続人から遺贈を受けることはできます。

「9」 廃除を取消すことができますか?

被相続人は,家庭裁判所の審判によって,いつでも廃除を取り消すことができます。

「10」 事務所では相続人の廃除を担当した経験はありますか?

あります。

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相続分の譲渡

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「1」 相続分の譲渡とはなんですか?

消極財産を含む相続財産全体に対する割合的な持分(相続分)を譲渡することです。
例えば,相続人が配偶者と子2人(A・B)の場合,相続分は配偶者が1/2,Aが1/4,Bが1/4ですが,配偶者が相続分全部をAに譲渡した場合の相続分は,配偶者が0,Aが3/4,Bが1/4となります。

「2」 どのような場合に相続分の譲渡がなされますか?

共同相続人が非常に多数な場合,居住地が遠方でバラバラの場合等,共同相続人の意思を確認して協議を進めるには,手間も時間も非常にかかります。そのような場合に,事件処理整理の観点から,共同相続人間で中心的な役割を果たしていた人に相続分の譲渡をすると,相続手続が簡略化して円滑に行うことができます。
相続分を譲渡した当事者間では,相続分譲渡時や遺産分割完了後に,相続分譲渡の対価を譲受人から譲渡人が得るなどの方法で,経済的な補填をすることもできます。

「3」 相続分の譲渡がなされる場合として,他にありますか?

遺産分割に関わることや相続財産の取得を欲しない相続人に対しては,相続分の譲渡をしていただき,相続関係から離脱していただくことができます。

「4」 共同相続人ではない第三者に譲渡することもできますか?

誰に相続分を譲渡するか譲渡人の意思で決定することができ,共同相続人は勿論,共同相続人ではない第三者に対しても譲渡をすることができます。
なお,相続手続の円滑化,相続手続からの離脱という観点から,相続分の譲渡は共同相続人間でなされることが多いです。

「5」 相続分の譲渡をするのに,決まった方式などありますか?

特段の方式は必要とされておらず,口頭あるいは書面のいずれによっても譲渡は成立します。
但し,実務上は,「相続分譲渡証書」を譲渡人と譲受人で作成するのが通常です。

「6」 相続分の譲渡はいつできますか,また,いつまでできますか?

相続分の譲渡は,相続開始後遺産分割完了まですることができ,相続放棄のような3か月以内という期間制限もありません。

「7」 相続分の譲渡をした後,別の相続人に二重に譲渡した場合はどのようになりますか?

先になされた相続分の譲渡が有効とされる以上は,後になされた相続分の譲渡は無効と考えられます。

「8」 相続分の譲渡をすると,相続債務の負担を免れることができるのですか?

できません。
債権者との関係では,譲渡人と譲受人が併存的に債務を負担すると解するのが多数説となっていて,相続債務の負担を免れることはできないと考えられます。
相続に関してプラス・マイナスの財産全て放棄することである相続放棄をすることになります。

「9」 相続分の譲渡が相続人でない第三者になされました。その第三者を遺産分割協議に関わって欲しくないのですが,何か手段がありますか?

譲渡人以外の共同相続人は,譲渡から1か月以内であれば,価額及び費用を償還して相続分を取り戻すことができます(民法第905条)。

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遺留分侵害請求権

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「1」 遺留分制度とは何ですか?

法律が一定の法定相続人に対して法定相続分の一部を保障する制度です。ですから,遺言で財産を全部譲るとしても遺留分は侵害できないということです。

※遺留分制度に関する改正について(施行は2019年7月1日)
・改正前,遺留分減殺請求権の行使により当然に物権的効果が生ずるととするのが通説であり,実務でもそのように理解されていました。このため,遺留分減殺請求権の行使により,遺贈又は贈与の目的物は受遺者等と遺留分権利者との共有となることが多かったのですが,共有関係の解消をめぐって新たな紛争を生じさせるこというような問題があります。
そこで,「遺留分権利者及びその承継人は,受遺者又は受贈者に対し,遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる」との規定を新設し,遺留分減殺請求権から生ずる権利を「遺留分侵害額請求権」として金銭債権化しました(民法1046条1項)。この改正により,遺留分減殺請求権の行使により共有関係が当然に生じることを回避することになりました。・改正前は,遺留分侵害額の計算方法は明文化されていませんでしたが,実務上定着していた以下の計算方法を明文化しました(民法1046条2項)
遺留分侵害額=(遺留分)-(遺留分権利者が受けた特別受益)-(遺産分割の対象財産がある場合には具体的相続分に応じて取得すべき遺産の価額)+(遺留分権利者が承継する相続債務の額)
・改正前は,旧1033条から1035条が,減殺の対象となる遺贈・贈与が複数ある場合についての減殺の対象となる遺贈・贈与の順序を定めていましたが,改正法1046条が遺留分減殺請求権の効力を改め,遺留分権利者の権利を金銭債権化したことに伴い,「受遺者又は受贈者は,次の各号の定めるところに従い,遺贈又は贈与の目的の価額を限度として,遺留分侵害額を負担する」のように受遺者等の負担額に関する規定に改められました(民法1047条1項)。この負担の全部又は一部の支払いについて裁判所は相当の期限を許与することができます(民法1047条5項)。
・従前,受遺者又は受贈者が,遺留分権利者が承継する債務である「遺留分権利者承継債務」を弁済等により消滅させる行為をした場合の規律について規定はありませんでしたが,「遺留分権利者が相続によって負担する債務がある場合,受遺者又は受贈者が,当該債務を消滅させる行為をしたときには,消滅した債務の額の限度において,遺留分権利者に対する意思表示によって遺留分侵害額の算定により負担する債務を消滅させることができる。この場合において,当該行為によって遺留分権利者に対して取得した求償権は,消滅した当該債務の額の限度において消滅する」との規定が新設されました(民法1047条3項)。
・改正前,相続人に対して生前贈与がされた場合は,その時期を問わず原則としてそのすべてが遺留分算定の基礎となる財産の価額に算入されると解されていましたが,改正により,相続人に対する贈与については,相続開始前の10年間になされたものに限って算入されることになりました。また,持ち戻しの対象となる贈与の価額についても婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限るものとされました(民法1044条3項)。
・遺産分割の対象となる財産がある場合の遺留分侵害額の計算においては,遺留分権利者が相続によって得た積極財産の額を控除するが,この控除額の計算方法について,法定相続分を前提に算定する法定相続分説と,具体的相続分を前提に算定する具体的相続分説が対立していましたが,新民法では,遺産分割が終了しているか否かにかかわらず,具体的相続分説を採用することを明記しました(民法1046条2項2号)。

「2」 遺留分権利を与えられている者の範囲は?

①配偶者,②子(その代襲者),③直系尊属の範囲です。ですから,兄弟姉妹は権利者でないということです。言い換えると妻(あるいは夫),子,両親は権利者ですが,姉,兄,弟,妹は権利者にあたらないということです。

「3」 遺留分の割合はどのようになっていますか?

総体的な遺留分の割合は直系尊属だけが相続人だけなら3分の1,その他の割合は2分の1です。これを前提に個別の法定相続分を乗じると個別の遺留分の割合が算出されます。

「4」 遺言で遺留分が侵害されるということはよく聞きますが,生前の贈与ではどうなのですか?

生前贈与でも遺留分侵害の問題になります。

「5」 遺留分減殺請求とはなんですか?

遺留分を侵害する遺言や生前贈与などの効力を奪うことができる権利です。

「6」 遺留分減殺の請求で注意することを1つ教えてください。

やはり時効です。知った時から1年で消滅してしまいます。なお,相続開始から10年経過でも消滅してしまいます。

「7」 時効を中断する方法は?

遺贈であれば遺贈を受けた者に請求することですが,明確にするため通常は内容証明郵便で請求をします。

「8」 今,1つ注意点を挙げるとすれば?

遺留分減殺の請求は遺贈の効力が有効であることを前提にしたものです。ですから,遺贈の無効も検討したいという場合には注意と工夫が必要です。

「9」 事務所では遺留分に関する事件を担当した経験はありますか。

経験があります。

「10」 担当された事件はどのような段階のものですか。

話し合いの段階,訴訟(裁判)の段階,いずれも複数,担当したことがあります。

「11」 解決するにはどれくらいの時間がかかるものですか。

ケースバイケースで一概には言えません。ケースによっては早期に解決することもあります。

「12」 よく問題となることを一つ教えてください。

遺産分割においてもよく特別受益が問題となりますが,遺留分減殺請求においても特別受益が問題となることが少なくありません。また,対象となる不動産などの評価についても同様です。

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相続に関する分野

相続に強い広島の弁護士
momiji-icon01.png 相続問題についてmomiji-icon2.png

 当事務所のホームページをご覧いただきありがとうございます。当事務所は設立してから10年以上にわたり相続問題について解決してきました。

 遺産分割の協議をはじめ,調停審判などの裁判手続,その中で,特別受益寄与分の主張などの案件についても携わって参りました,また,遺言書の作成相続放棄に関するもの,遺留分侵害請求に関する事件なども担当して参りました。

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相続の問題は,生前,相続人間で無用なトラブルが生じることがないよう対策を立てることが大切です。これまでの経験を踏まえて,また,相談者目線でわかりやすく説明をさせていただきますので,何とぞ宜しくお願い申し上げます。


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