• 「1」 現在,妻と別居し離婚調停中です。妻との間には,5歳の息子がおり,妻と一緒に暮らしています。調停では,財産分与で揉めており,調停が長引く可能性がありますが,妻が,離婚が成立するまで息子には会わせないと言っています。私は,離婚が成立するまで,息子と会うことはできないのでしょうか?

    原則会うことができます。
    父母が離婚の前後を問わず,別居状態にある場合に,子と同居しておらず,子の監護をしていない親が,子と直接会うこと並びに手紙,電話,及びメール等を利用した通話などで連絡を取り会うことで親子の意思疎通を図ることが認められており,これを一般的に「面会交流」といいます。
    両親が離婚したり別居中であっても,子にとっては親であることに変わりはありません。未成年子にとって面会交流をすることが,その人格形成,精神的発達に有益又は必要と考えられています。
    ただし,別居親がかつて子にDVをしていた等,面会交流をすることが子のためにならないような場合には,面会交流が制限されることがあります。

  • 「2」 元妻と離婚し,これまで月1回程度の頻度で小学生の娘と面会交流を行ってきました。しかし,先日から急に元妻が,「これからしばらくの間,面会交流は中断してほしい。」と何の理由もなく一方的にメールが送られてきました。妻に連絡を取り,面会交流を再開してもらうように話し合いをしましたが,全く取り合ってもらえませんでした。面会交流を再開するためにはどのようにすればよいのでしょうか?

    自主的な面会交流が実現しない場合には,家庭裁判所へ面会交流に関する家事調停又は家事審判を申し立てることが考えられます。離婚調停・離婚訴訟をしている場合には,離婚後の面会交流について一緒に定めることができます。家事調停は,家庭裁判所において面会交流についての決まりごとを両親で話し合う場であるため,決まりごとについて両当事者の合意が無い限り成立しません。両者の合意が得られず,調停が成立しない場合には,自動的に家事審判に移行します。家事審判は,面会交流についての決まりごとについて,家庭裁判所が決定します。

  • 「3」 別れた元妻が,面会交流に当たって,私の意見など取り入れてくれるとは思えず,調停をしても無駄なような気がします。面会交流の調停を経ずに,審判を申し立てることはできますか?

    できます。
    面会交流の調停と審判の間には,調停を先にしなければいけない(調停前置主義)という決まりはありませんので,調停を経ずにいきなり審判を申し立てることができます。
    しかし,面会交流は,家族の問題ですので,可能な限り話し合いでの解決が望まれているのも事実です。そのため,実務では,いきなり審判を求めるのではなく,まずは,面会交流調停を申し立てることが一般的といえます。
    また,面会交流のこのような趣旨から,いきなり面会交流の審判を申し立てた場合であっても,家庭裁判所はいつでも職権で審判で係属している事件について,一度調停で話し合いなさい,として調停に付すことができます。
    面会交流を実現するためには,当事者双方が納得した面会交流についての決まりごとを決めることが重要ですので,まずは,面会交流を申し立てた方が良い場合が多いと思われます。

  • 「4」 調停(又は審判)で面会交流の方法や回数について決まりましたが,元妻がその取り決めに応じず,子どもに会わせてくれません。このような場合,どうしたらいいのでしょうか?

    面会交流の調停や審判の取り決めに相手が従わない場合の法的手段として,①履行勧告(りこうかんこく),②間接強制,③損害賠償請求の3つの手段が考えられます。しかし,これらの方法は,いずれも面会交流を実行させる決定打にはならないことはよく理解しておくべきです。なぜ相手が面会交流を実施しないのか,その原因を探ることも重要となります。
    ①履行勧告
    履行勧告とは,調停や審判で決まった義務を守らない人に対し,それを守らせるために調停や審判をした裁判所から守るように働きかけてもらう方法です。
    履行勧告の申出がなされると家庭裁判所の調査官等が,義務を守らない相手方に対し,電話や手紙等で事情を聴取し,面会交流が実現できるように調整をします。
    ただし,履行勧告には,強制力や罰則がないため,裁判所からの働きかけをしても相手が応じなければ面会交流の実現は出来ません。
    ②間接強制
    間接強制とは,調停(又は審判)で決まった面会交流を実行しない親に対し,違反1回に対して制裁金を支払えと裁判所に銘じてもらうことで,相手方に心理的圧迫を加え,間接的に面会交流の履行を実現するように促すものです。
    ただし,間接強制が認められるためには,調停(又は審判)で決められた取り決めがかなり具体的なものでないと裁判所は認めない傾向にあります。そのため,相手方が単に取り決めを破った程度では容易に認められるものではありません。
    ③損害賠償請求
    これは,相手方が,調停や審判で決められた面会交流を実施せず,その拒否に正当な理由が無い場合には,面会交流を拒否する行為が不法行為に該当するとして慰謝料の損害賠償請求をするものです。そのため,面会交流を現実に実施する手段とは言えません。
    既に説明したことですが,面会交流は子どもの健全な成長・発達のためであり,また,父母の協力が必要不可欠です。そのため,面会交流の拒否をされた場合に,以上の3つの手段が考えられますが,②③をした場合,その後の父母の関係性を修復することは困難なことも多く,以後面会交流に全く協力しなくなることも考えられます。そのため,どうしても相手が応じない場合の最終手段と考えておいた方が良いでしょう。
    また,まだ数は少ないですが,相手方が面会交流に全く応じないことを理由に,親権者の変更が認められた例もあります。

  • 「5」 元夫と離婚し,約1か月に1回の頻度で面会交流を行っています。 しかし,元夫との面会交流後,子どもが体調を崩すことが多く,子どもと元夫をあまり会わせたくありません。どうしたらいいでしょうか?

    家庭裁判所に面会交流を禁止する調停又は審判を申し立てることが考えられます。
    調停や審判で面会交流を実施することが定められていても,面会交流の結果,子に悪影響が出て,面会交流を中止した方が,子の福祉になるといった場合には,再度,面会交流について,それを禁止する調停又は審判を申し立てることができます。
    ただし,合理的な理由もなく,自身の考えだけで面会交流を拒否し続けると,相手方から慰謝料の請求をされる可能性もあります。

  • 「6」 別れた元夫が約束した養育費を支払ってくれません。 元夫が養育費を支払うまで子どもに会わせないようにすることはできますか? 

    原則できません。
    面会交流と養育費請求権は,一方が認められる事を前提に他方が認められる,といった関係にはありません。たとえ,元夫が養育費を支払っていなくとも,それを理由に直ちに面会交流を拒否できるものではありません。仮に,これを認めてしまうと,子の福祉のための面会交流が,お金を引き出すための手段になりかねません。
    ただし,養育費の不払いによって子どもの生活状況が脅かされるなどの事情がある場合には,子の福祉を害する一事情として考えられ,面会交流の実施に影響を与えることもあるでしょう。
    また,以上の面会交流と養育費の関係から,面会交流を実施してくれないことが,養育費の支払を拒否する理由になるものでありません。