-
●マンションの耐震性の現状を教えてください。
まず,マンションの分譲時等においては,建築法令上の耐震基準を満たしていない場合は,欠陥住宅であり,法的責任を問えます。
他方,分譲時等においては,満たしていたものの,その後の法令の改正によって耐震基準を満たさなくなった場合は,法的責任を問うことはできません。
耐震基準は,
ア 1971年より前に建設された「旧旧耐震基準」に基づくもの
イ 1981年より前に建築され,1971年に改正された建築基準法施行令に基づく「旧耐震基準」によるもの
ウ 1981年に改正された建築基準法施行令に基づく現行耐震基準によるもの
があります。
現行の耐震基準(上記のウ)に適合しない建物を既存耐震不適格建築物と言います。
改正建築物耐震改修促進法では1981年以前に建築された「旧旧耐震基準」又は「旧耐震基準」に基づく建築物で現行の耐震基準を満たしていないものには,以下のア~ウなどの対策が講じられています。
まず,
ア 既存耐震不適格建築物の耐震診断・耐震改修についての努力義務
です。
しかし,法的義務ではないことから,強制力はなく,また,マンション管理組合に対するものとされています。
次に,
イ 所管行政庁に対し,当該建築物について地震に対する安全性に係る基準に適合している旨の認定を申請ができ(建物の安全性認定制度),「旧旧耐震基準」 又は 「旧耐震基準」に基づく建物であっても,現行の耐震基準等を満たしている旨の「安全性認定」 を受けることができます。
さらに,
ウ 前記アの義務に応じる等して耐震診断が行われた場合,所管行政庁に対し,当該区分所有建築物について耐震改修を行う必要がある旨の認定を申請することができると言う(耐震改修必要性認定制度)があり,この認定を受けた場合(これを要耐震改修認定建築物と言います。)に, 区分所有者は耐震改修を行うよう努めなければなりません。
「要耐震改修認定建築物」の認定を受けた場合には,区分所有法で要求する集会における特別多数決議 (区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数決議) を必要とせず, 過半数決議による集会の決議でこれが可能となります。ここでの「集会の決議」と異なる要件を設ける規約の定めは無効とする立場が有力とされています。 -
●マンションの専有部分, 共用部分はマンションのどこを指すのですか?
専有部分とは区分所有者各自が所有する部分(構造上の独立性と利用上の独立性を要する。)で,その他が共用部分ということになります。共用部分には,法定共用部分と規約共用部分があり,前者は,階段や廊下等のように,各専有部分に通じる部分やその他の専有部分を使用するために,マンションの全員又は一部の人が共用しなければならないもの,当然に共用部分となるものを言い,後者は,集会室はなど,規約上,共用部分であることを定めることで共用部分となるもので,第三者に対抗するためには登記することを要するものです。
-
●マンションの敷地利用権とは何ですか?
マンションの敷地の権利で所有権と借地権等があり,後者には普通借地権と定期借地権(①借りる期間を50年以上とし,返却時には原則更地にして返す「一般定期借地権」と,②借りる期間を30年以上とし,建物を地主に譲渡することをあらかじめ約束して借地する「建物譲渡特約付借地権」があります。)などがあります。
また,敷地の設定には,建物が所在する土地についての法定敷地と,規約によって敷地とする土地である規約敷地があります。
敷地利用権は,原則,持分は専有面積に応じて有することになります。 -
●管理組合とは何を意味するのですか?
区分所有法3条で「管理を行うための団体」を当然成立とし,全ての区分所有者で構成されます。
管理組合の業務には,マンションに関わる維持・管理であって,
① 共用部分の清掃,設備の点検修繕等,
② 長期にわたる計画的に修繕をするためには長期修繕計画を立て,それに基づく修繕(共用部分の保存・管理・変更・復旧・建替え等)等,
③ 専有部分のリフォームのコントロール等
があります。さらに,
④ 騒音の問題,路上駐車の問題など,共同生活に関わる問題について,ルールの作成,これの遵を促す活動を行う等(団体の業務・共同の利益に反する行為の停止,使用禁止,競売の請求,占有者への引渡請求等),
⑤ 運営管理,組織の運営と共用施設の運営等
があります。 -
●区分所有法上の管理者とはどのような人ですか?
マンション管理の最高責任者で, 管理組合の業務を統括者であり, 管理組合の代理人です。 すべての区分所有者により管理行為をすることは困難であり,一定の範囲の管理行為について権限を与えられた管理を行わせる代理人が必要となり,これが管理者となります。
管理者は総会の決議で選任・解任されますが,規約で別の定めをしてもよく,標準管理規約に従って 「管理者は理事長とする」と定められている場合が少なくありません。 -
●管理規約とは何を意味するのですか?
管理規約は,区分所有者相互の契約で管理組合の最高の自治規範です。
基本的にマンション管理は区分所有法によるものですが,同法律は,マンション以外の区分所有の不動産全てに適用できるようにその所有や管理に関する最低限のルールと言うべきものです。これを前提にして,例えば,「ペットを飼ってはいけない」など最低限のルールを超えて定められるものが管理規約なのです。
管理規約は,区分所有法に反する内容は無効とされます。
また,規約改正には,区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による議決が必要です。 -
●総会とそのルールについて教えてください。議決権はどのようになっていますか?
総会とは, 区分所有者全員による管理の方針決定ものであり,また,総会で決まったことは規約と同じ効力を有します。また,総会の招集は管理者が行い(招集を管理者が行わない場合等は、区分所有者の5分の1以上の者で発起,招集を請求ができ,請求されると, 管理者は招集する必要があります。),年に1回招集することが義務付けられています。また,その通知は遅くても1週間前にする必要があります。
総会成立については,人数の要件については区分所有法に定めがありませんが,規約において要件を定めていることが一般的です。総会での議決権の割合は,規約で特に定めが無い場合は区分所有法の規定によるものとされ専有部分の床面積の割合によることになります。但し,決議する際には, 「区分所有者及び議決権」ですので, 区分所有者の数を算入することを要します。 -
●理事,理事会はどのようなものなのでしょうか。
理事とは区分所有者を代表する管理組合の役員で,区分所有者の中から選ばれ理事会を構成する者です。
理事会では,収支決算案や,規約及び使用細則の制定又は変更,長期修繕計画の作成等を行います。
一般的な管理組合の場合には,理事は区分所有法上,その選出は義務付けられておりません。理事になる資格は,各マンションの規約で定めることになり,法律上,区分所有者以外でも理事になることができます。
理事会への出席は理事の半数以上が出席しなければ開くことができず,その議事は出席理事の過半数で決するという定めが多く,一般的には委任状による代理出席は認められていません。
現在,マンションにおいて,所有者が居住するのではなく,借家人が増加し,また,空き家などが増加しています。
一般的には,規約で理事の条件に「現に居住する区分所有者」と規定されていることは少なくありませんが,「賃借人等の占有者」に広げているケースも増加傾向にあると言えます。また,理事は輪番で任期1年とされることが多いとされます。 -
●マンションの専有部分, 共用部分は法律上はどのように整理されるのですか。
専有部分とは構造上の独立性と利用上の独立性を備えた区分所有者各自が所有する部分であって、その他が共用部分ということになります。共用部分には, 法定共用部分と規約共用部分があり,法定共用部分は,階段や廊下のように, 各専有部分に通じる部分やその他の専有部分を使用するために, マンションの全員又は一部の人が共用しなければならないもの,で,規約共用部分は,集会室はなど,規約上,共用部分であることを定めることで共用部分となるものです。
-
●上階の夫婦には小さな子供がいます。毎日のように子供が走りまわる音が聞こえるので,体調を崩してしまいました。このような騒音は,法的にはどのように扱われるのでしょうか。
騒音が,通常人ならば社会共同生活を営む上で,当然受忍すべき限度を超えて被害を被っている場合が違法と評価されます。そして,その具体的な判断は,侵害行為の態様,侵害の程度,被侵害利益の性質と内容,侵害行為が生じた所在地の地域環境,侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況,その間にとられた被害の防止に関する措置の有無及びその内容,効果等の諸般の事情を総合的に考慮して判断されることになります。
なお,騒音を証明するための資料について,発生の時刻,時間,発生場所などについてのメモ,さらに騒音について騒音測定器で測定することも考えられるでしょう。
なお,仮に不法行為を構成する場合であっても損害賠償による解決が主で,差止めが認められるのは違法性がかなり強い場合に限定されます。
騒音問題は,法的対応での根本的な解決は非常に難しいところがあります。まずは,騒音元の方と十分に話し合いをすることでの解決を目指すことをお勧めします。
(慰謝料を認めた裁判例として,「東京地判平成19年10月3日判時1987号27頁」,差し止めを認めた裁判例として,「東京地判平成24年3月15日判時2155号71頁」。) -
●私が居住するマンションの外壁にヒビ割れが発生しています。マンションの施工業者に責任を追及したいと考えています。可能でしょうか。
施工業者とは契約関係にありませんから,不法行為による損害賠償請求ができるか否かが問題になります。
そもそも,建物は,その利用者や隣人,通行人(居住者等)の生命,身体又は財産を危険にさらすことがないような安全性(基本的な安全性)を備えていなければならず,施工業者はそのための配慮義務あります。施工業者がこの義務を怠ったため建物の基本的な安全性を損なう瑕疵があり,それにより居住者等の生命,身体,財産が侵害された場合には,施工業者は,特段の事情のない限り,その損害を受けた居住者等に対し不法行為による損害賠償責任を負担するものとされます。
なお,ここでの建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵とは,居住者等の生命,身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず,当該瑕疵の性質に鑑み,これを放置するといずれは居住者等の生命,身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合もこれに該当するものとされ,建物の構造耐力にかかわらない瑕疵であっても,これを放置した場合に,例えば,外壁が剥落して通行人の上に落下したりなどして人身被害につながる危険のある場合も,ここで言う建物の基本的な安全性を損なう瑕疵に該当するものとされています。
結論として,建物の所有者は,施工業者に対して,瑕疵の修補費相当額の損害賠償を請求できる余地はあると言えるでしょう。
-
●マンションを競売により買い受け,登記も完了しました。前所有者は破産し,途中で破産管財人が財団から当該マンションを放棄し,その後抵当権が実行されて私が買受けました。前所有者は免責を受けたとのことです。前所有者の管理費の滞納について私の所有権取得登記まで全てを管理組合から請求されましたが,全部支払わなければならないのでしょうか。
請求された全部について支払う必要はありません。破産管財人が財団よりマンションを放棄後あなたの所有権取得までの間の滞納分について,支払う義務があります。
-
●マンションのバルコニーは誰のものなのでしょうか。
バルコニーは,マンションの各住戸の人が専用使用しているものですが,その多くは共用部分です。
そうすると,バルコニーに個人の物置を置く,庭園として利用することは法的には×ということになります。
実際にも,バルコニーは避難経路になりうるもので,共用廊下の他に,避難経路の確保が必要だからです。裁判例の中にはバルコニーに物置を置いた者に対して撤去を命じたものもあります。 -
●総会に出席できる人はどのような人ですか。
区分所有者の他,賃借人など区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者については,当該会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には, 集会に出席して意見を述べることができます。
なお,議決権はありません。 その他に規約で定め, 理事会が認めた者として管理会社マンション管理士などが出席する場合があります。
集会の議事について,議事録を作成しなければならず,その保管は管理者が行い, 利害関係者の請求があったときは, 閲覧を拒んではいけません。
-
●管理組合法人と聞きますが,どのようなものを言うのですか?
管理組合は,生まれた状態では法人格はありませんが,管理組合の総会で「管理組合を法人にする」旨を特別多数決(区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による決議)で決議をし,法人の名称,事務所を定め,理事と監事を選び,事務所の所在地において登記所で登記することで,管理組合法人になります。