• 「1」 過払金とは何ですか?

    過払金とは,貸金業者に払い過ぎた金銭のことを言います。払い過ぎた金銭は返す必要のない金銭として返還請求をすることができます。

  • 「2」 過払金は,なぜ発生するのですか?

    貸金の利息は,利息制限法によると,貸金の利息は,以下のように定められ,これを超えた利息の支払いは無効とされています(同法1条)。
    元本の額が10万円未満の場合        年20%
    元本の額が10万円以上100万円未満の場合 年18%
    元本の額が100万円以上の場合       年15%
    よって,貸金業者は上記利息制限法の法定利率(年15~20%)の範囲内で貸付をしなければならないのですが,現実には,貸金業者は法定利率を大きく超える利率(約定利率)で貸付を行っていたため,過払金が発生したのです。

  • 「3」 銀行からの借入でも過払になりますか?

    銀行(信用金庫,信用組合,労働金庫等も同じです)は,利息制限法の上限利率(制限利率)の範囲内で貸付をしていますので,過払金にはなりません。過払金が発生している可能性があるのは,消費者金融やクレジットカード会社等の貸金業者です。

  • 「4」 何故,貸金業者は法定利率を超える利率で貸付をすることができたのですか?

    法定利率を規制する法律には,利息制限法の他に出資法(正式名は,「出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律」)がありました。
    出資法によると,貸金業者の場合,約定利率が以下の利率を超えた場合に刑事罰を定めて規制をしていました。
    昭和58年10月30日以前  年109.5%
    昭和58年11月1日~    年73%
    昭和61年11月1日~    年54.75%
    平成3年11月1日~     年40.004%
    平成12年6月1日~     年29.2%
    (平成22年6月18日~   年20%)
    他方,利息制限法では刑事罰による規制を科していませんでした。
    そのため,多くの貸金業者は,利息制限法の法定利率(年15~20%)と出資法の上記制限利率の範囲内(このことを一般的に「グレーゾーン」と呼ばれています)で貸付をしていました。
    また,旧貸金業法では,一定の要件を満たした場合に,借主が任意に支払った法定利率を超える利息の支払いを有効なものとみなす規定(みなし弁済)が設けられていました。そこで,多くの貸金業者は,このみなし弁済の規定を理由として,超過利息の支払いを有効なものとみなし,過払金が発生しないものとして貸付・弁済の受領を続けていたのです。

  • 「5」 みなし弁済の規定により過払金を請求することができなくなるのですか?

    みなし弁済規定が適用される要件は,以下のとおりです。
    ①貸金業者に対する利息・損害金の支払いであること
    ②貸金業法17条所定の契約書面・18条所定の受取書面(領収証)が交付されていること
    ③任意に支払ったこと
    この「みなし弁済規定」適用の可否について,最高裁平成18年1月13日判決(シティズ判決)は,期限の利益喪失特約(借主が約束どおりに元本等の支払いを怠った場合は,貸主が借主に対して残りの債務全額を一括で支払うよう請求することができる旨の特約)がある場合は,③の要件である「任意に支払ったこと」の要件を欠くと判断しました。
    そして,この判決以前は,ほぼ例外なく契約書で期限の利益喪失特約が定められていたので,みなし弁済が適用されることは皆無となり,結果,超過利息の支払いは無効であり過払金として返還請求できることが確定的となりました。

  • 「6」 過払金が発生するための期間,過払金の金額はどのようなものですか?

    一概には言えませんが,当事務所の経験では,制限超過利息を支払っている期間が5年~7年であれば過払金が発生している可能性が高いです。金額も一概には言えませんが,借りた金額が多額,利息が高利,取引の期間が長期,であれば過払金も多額になる傾向です。

  • 「7」 過払金返還請求はいつまでできますか?

    過払金返還請求の消滅時効が,最後の取引,即ち,最後に借入・返済をした日から10年なので,最後に借入・返済をした日から10年を経過していなければ過払金を取り戻せる可能性があります。

  • 「8」 過払金返還請求の手続きはどのようなものですか?

    過払金が発生しているかどうか,発生していたとして,その額はいくらであるかを確認するためには,貸金業者との間の取引履歴(借入日・返済日,借入金額・返済金額)を再現する必要があります。しかし,借主自身が,取引履歴を再現するための資料(契約書,ATM伝票等)を全て保管していることは極めて稀です。そこで,まず,貸金業者に対して,取引履歴の開示を求めます。
    取引履歴の開示を受けた後,利息制限法で引き直し計算をして,示談交渉あるいは訴訟を提起することによって,過払金の返還を請求します。

  • 「9」 引直計算とはどのようなものですか?

    契約上の利息(約定利息)を利息制限法の上限利息(法定利息)で再計算をし,法定利息を超過した利息を元本に充当することで,元本を減少させる計算方法です。計算式は複雑で,多数回の取引について計算しなければならないことから,過払金を計算するソフトを使用します。

  • 「10」 借金を返済中でも過払金になることはありますか?

    現在,借金の返済の継続中であっても,引直計算の結果,元本が完済されていて過払金が発生していたことを多く経験していますので,まずは弁護士に相談されてみてはどうでしょうか。

  • 「11」 過払金に利息は付きますか?

    判例によると,みなし弁済の適用が認められない場合には,貸金業者は悪意の受益者と推定されると判断されており,ほぼ全ての貸金業者は悪意の受益者であるから,過払利息が発生すると考えられます。
    なお,判例によると,過払利息は年5%であり,過払金発生の時から利息は発生するものとされています。

  • 「12」 取引に空白期間がある場合の過払金の計算はどのようになりますか?

    空白前の取引を「第1取引」,空白後の取引を「第2取引」といい,第1取引と第2取引を併せて引直計算する場合を「一連計算」,個別に計算する場合を「個別計算」といいます。取引期間が長ければ過払金も大きくなる傾向なので,一連計算のほうが過払金も大きくなります。特に,第1取引終了後10年を経過していて個別計算によらざるを得ない場合には,第1取引で発生した過払金が時効消滅して第2取引による過払金のみ(場合によっては借金が残る場合もあります)を請求しうることになります。よって,「一連計算」と「個別計算」のどちらで計算するかは,過払金の額に大きく影響しますが,現在,空白期間が1年あると一連計算を認めない裁判例が多いとの傾向です。