• 「1」 特定調停とは何ですか?

    個人の債務を整理するための手続きとしては,破産,個人再生,任意整理,特定調停の各手続があります。
    その内,特定調停とは,支払不能に陥るおそれのある債務者について,金銭債権を有する債権者との間で,金銭債務の内容の変更,担保関係の変更その他の金銭債務に係る利害関係を調整する調停手続をいいます。

  • 「2」 特定調停のメリットにはどのようなものがありますか?

    ① 申立てにより,業者からの取り立てが止まります。
    ② 取引履歴の開示を受けることができます。
    ③ 民事執行手続きを停止するよう申立てをすることができます。

  • 「3」 特定調停のデメリットにはどのようなものがありますか?

    ① 過払金が発生している場合,過払金の請求は別の手続きによるのが一般的です。
    ② 調停が成立しなければ,別途法的手続を検討することになります。

  • 「4」 特定調停と民事再生ではどのような違いがありますか?

    民事再生も特定調停も,債務を弁済しつつ債務者の経済的再生を図る点で共通しますが,個人再生が全ての債権者を対象とするのに対し,特定調停は一定の債権者のみを対象とすることができる点で異なります。また,民事再生では,個別執行が禁止されますが,特定調停では当然には個別執行は禁止されません。

  • 「5」 特定調停は,どのような人が申立てをすることができますか?

    金銭債務を負っている者であって,①支払不能に陥るおそれのあるもの,②事業の継続に支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することが困難であるもの,③債務超過に陥るおそれのある法人,が申立てをすることができます。
    ①・②は個人・法人ともに申立てをすることができますが,③は法人のみです。

  • 「6」 全ての債権者を相手方として申立てをしなければなりませんか?

    全ての債権者を相手方とすることも,一部の債権者を相手方とすることもできます。

  • 「7」 特定調停は,どの裁判所に申立てをしますか?

    原則として,相手方の住所,居所,営業所若しくは事務所の所在地を管轄する簡易裁判所,又は当事者が合意する地方裁判所又は簡易裁判所に申立てをします。
    但し,上記の管轄以外に申立てをした場合であっても,事件を処理するために適当であると裁判所が認めるときは,事件を他の裁判所に移送したり,自ら処理することができます。

  • 「8」 特定調停を申立てするには,どのような書類が必要ですか?

    申立人は,①申立書,②財産の状況を示すべき明細書その他特定債務者であることを明らかにする資料,③相手方一覧表を提出する必要があります。
    その他,申立人が事業者である場合には,④債権者との交渉の経緯及び申立人の希望する調停条項の概要を明らかにする必要があり,法人の場合は労働組合もしくは従業員の過半数を代表する者の名前を明らかにする必要があります。

  • 「9」 裁判所では,どのようなことが行われますか?

    調停委員が,申立人から,生活や事業の状況,これからの返済方法などについて聴いた上で,債権者の考えを聴いて,残っている債務をどのように支払っていくことが,公正かつ妥当で,経済的に合理的なのかについて,双方の意見を調整していきます。

  • 「10」 特定調停は,どのようにして成立しますか?

    当事者間の任意の合意により調停が成立します。
    一方当事者が期日に出頭困難な場合には,書面による受託により調停が成立します。

  • 「11」 特定調停は,当事者間の合意以外に解決に至る場合がありますか?

    調停が成立する見込みがないが,相当であると裁判所が認めるときは,裁判所は,当事者双方のために衡平に考慮し,一切の事情をみて,職権で,当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で,事件のために必要な決定をすることがあります(民事調停法第17条)。但し,この決定に対して当事者は,決定の告知を受けた日から2週間以内に異議の申立てをすることができ,その場合は,この決定の効力を失います。異議の申立てがないときは,この決定は裁判上の和解と同一の効力を有します(民事調停法第18条)。

  • 「12」 特定調停の効力にはどのようなものがありますか?

    調停が成立したときに作成された調停調書は,裁判上の和解と同一の効力を有します。
    なお,調停が成立しなかった場合,調停が終了したときから2週間以内に債権者が訴えを提起した場合には,調停申立て時に訴えが提起あったものとみなされます。