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●慰謝料とは何ですか?
交通事故によって受けた精神的苦痛による損害を賠償するのが慰謝料です。
交通事故に関する慰謝料には,入通院慰謝料,後遺障害慰謝料,死亡慰謝料があります。
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●慰謝料額について目安となる基準はありますか?
慰謝料は,精神的苦痛を金銭的に評価するものですが,精神的苦痛それ自体を計測することは困難です。
そこで,交通事故に関する慰謝料を算定する基準について,以下の3つの基準が用いられています。
① 自賠責保険が定めている自賠責保険基準
② 任意保険会社が定めている任意保険基準
③ 裁判所・弁護士が使っている裁判・弁護士基準
この3つの基準を額で比較すると概ね,
自賠責保険基準 < 任意保険基準 < 裁判・弁護士基準
となります。
当事務所では,自賠責保険を請求する場合を除き,裁判・弁護士基準を使用しますので,以下では,裁判・弁護士基準を前提として説明をします。また,ここで記載した慰謝料額の基準は,公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編集・発行の「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」から引用したものです。いわゆる赤い本です。
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●入通院慰謝料とは何ですか?
病院に入院・通院したことによって生じた慰謝料です。加害者側の事情・被害者側の事情によって慰謝料額が上下することもありますが,基準としては入院・通院をした期間に応じて慰謝料額が算定されます。
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●入通院慰謝料の算定基準はどのようなものですか?
入通院慰謝料【別表1】(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編集・発行の「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」から引用)

この表によると,入院6か月のみの場合は244万円,通院6か月のみの場合は116万円,入院6か月後通院を6か月した場合は282万円となります。
なお,むちうち症で他覚所見がない場合等は,以下の表を使用します。
入通院慰謝料【別表2】(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編集・発行の「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」から引用)

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●後遺症慰謝料とは何ですか?
後遺症が発現したことによる慰謝料です。後遺症の等級(第1級~第14級)に応じた基準は以下のとおりです。
後遺障慰謝料表(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編集・発行の「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」から引用)

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●近親者にも後遺症による慰謝料が認められますか?
重度の後遺症の場合は,介護を余儀なくされるなどの近親者の精神的苦痛が,被害者の精神的苦痛と別個生じるものと考えられることから,近親者にも被害者とは別個慰謝料請求が認められる場合があります。
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●死亡慰謝料とは何ですか?
被害者が死亡したことによる慰謝料です。被害者の属性に応じた基準は以下のとおりです。
一家の支柱の場合 2800万円
母親,配偶者の場合 2500万円
その他 2000~2500万円
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●子ども・高齢者の場合の死亡慰謝料の相場はどの程度でしょうか?
およそ総額2000万円~2500万円とやや低めですが,精神的苦痛が甚大であったような場合には増額されるケースがあります。
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●近親者固有の死亡慰謝料を請求することができますか?
民法711条により被害者の父母,配偶者,子は慰謝料を請求することができます。また,判例上,父母,配偶者,子に準じる者も慰謝料を請求しうるとされています。
ただし,裁判実務上,近親者固有の慰謝料は,上記死亡慰謝料の表の金額に含まれていると考えられています。慰謝料を請求しうる近親者の人数が増えても,直ちに慰謝料総額が増えるわけではありません。
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●加害者の誠意が感じられないので,慰謝料を増額できますか?
誠意が感じられないからといって慰謝料の増額が認められることにはなりませんが,著しく悪質な態度(証拠隠滅をはかる,責任を否定する,虚偽の供述をする等)がある場合は増額の可能性もあります。
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●軽傷のため,1日しか病院に行きませんでした。慰謝料は請求できませんか?
通院したことに対する慰謝料として通院慰謝料があり,1日でも請求できます。
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●大事にしたくなく,体の痛みはありましたが病院には行っていません。慰謝料請求できますか?
通院をしなければ通院慰謝料は請求できません。体の痛みがあるのであれば,我慢せず受診されるべきです。
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●労災で慰謝料は払ってもらえますか?
慰謝料は労災では請求できません。
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●通院回数を増やせば,通院の慰謝料が増えるのですか?
必要以上に通院しても,入通院慰謝料は増えません。
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●交通事故によって流産してしまったことに対して,慰謝料請求できますか?
死亡した胎児自身の慰謝料請求はできませんが,母親の立場から流産したことによる慰謝料の増額が認められると考えられます。
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●交通事故によってPTSDと診断されましたが,慰謝料請求できますか?
PTSDと交通事故に因果関係があって,症状の程度によっては後遺障害に認定される可能性もあります。
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●示談交渉の間に加害者が亡くなったら,損害賠償はどうなりますか?
加害者の死亡によって損害賠償請求権は消滅しません。
基本的に加害者の相続人に請求していくことになります。 -
●示談交渉の間に被害者が亡くなったら,損害賠償はどうなりますか?
被害者の死亡によって損害賠償請求権は消滅しません。
基本的に被害者の相続人が請求していくことになります。 -
●後遺障害の影響で以前のように体をうまく動かせず,階段に手すりをつけようと考えています。リフォーム代は請求できますか?
相当であると判断される範囲では,認められる可能性があります。
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●後遺障害診断書の作成費用は請求できますか?
後遺障害に認定された場合には請求できますが,非該当の場合には請求できません。
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●後遺障害の要件はなんですか?
後遺障害とは,交通事故による怪我が完治せず,症状が残ってしまった状態のことで,認定されるためには次の5つの要件があります。
①事故による傷病で精神・身体に障害が残っている
②その障害と事故との間に因果関係がある
③障害が将来的にも回復困難と見込まれる
④障害の存在が医学的に証明されている
⑤障害が労働能力の喪失を伴っている -
●入院の後に死亡した場合,入院期間にかかった治療費を,死亡慰謝料とは別に請求できるのでしょうか。
被害者が一定期間の入院・通院後に亡くなった場合,その期間の治療費や入院費,付添費などの費用を死亡慰謝料とは別に請求可能です。
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●死亡事故の場合,葬儀費用は損害賠償請求できますか?
請求できます。ただし,対象となるのは通夜・祭壇・火葬・墓石などの費用で,香典返しや墓地代は含まれません。
賠償額の上限は,自賠責基準で100万円(実費がそれ以下なら実費分),弁護士基準では150万円が目安ですが,社会的地位や葬儀の規模により増額される場合もあります。
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●症状固定は,誰が決めるのですか?
主治医が痛みや機能障害が残っていてると判断して,法律上,「これ以上の改善は見込めない」と判断することで,症状固定となります。
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●整骨院で後遺障害診断書を作成してもらえますか?
整骨院で治療を受けても,柔道整復師は医師ではありませんので,後遺障害診断書を作成できません。
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●後遺障害診断書を医師に作成してもらううえで,気を付けることはありますか?
自覚症状は具体的に伝えることが重要です。必要な検査は確認して必ず受けるようにしましょう。また,機能障害や痛み・痺れについて,医学的根拠を記載してもらうことが大切です。
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●被害者請求とは何ですか?
被害者自身が自賠責保険に対して,治療費や後遺障害の認定などの賠償請求を行う手続きです。
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●加害者請求とは何ですか?
加害者またはその任意保険会社が自賠責保険に対して損害賠償を請求する手続きです。被害者請求に比べて手間が省ける反面,申請内容が不透明になる可能性があるのがデメリットです。
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●事前認定とは何ですか?
加害者側の保険会社が後遺障害の認定申請を行う手続きです。
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●被害者請求をするべき場合は,どんな時ですか?
以下のような場合,被害者請求を行うメリットが得られる可能性が大きいです。
①加害者が任意保険に未加入かつ資力も乏しい場合:自賠責保険から傷害・後遺障害分の補償を直接回収できます。
②示談交渉が長引きそうな場合:早期に自己負担分を回収できます。
③被害者の過失割合が大きい場合:被害者請求で負担軽減が可能です。
④後遺障害等級の申請を行う場合:適正な認定を得やすくなります。
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●被害者請求で自賠責保険に請求できる費目には何がありますか?
被害者請求では,「人の生命または身体」に関する損害のみが対象となります。
具体的には,①治療関係費(診察料・通院費・看護料など),②文書料(交通事故証明書・印鑑証明書など),③休業損害,④入通院慰謝料,⑤後遺障害による損害(逸失利益・後遺障害慰謝料),⑥死亡による損害(葬儀費・逸失利益・慰謝料など)が請求可能です。
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●被害者請求の流れを教えてください。
基本的には,被害者が加害者の自賠責保険会社へ被害者請求→自賠責保険会社から書類が審査機関へ→審査機関から自賠責保険会社へ結果の報告→自賠責保険会社から被害者へ結果の通知→自賠責保険からの保険金の支払(※認められた請求があった場合)となります。
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●被害者請求の請求期限はありますか?
被害者請求の請求可能期間は「損害および加害者を知った時から3年」です。
なお,傷害部分→事故翌日から3年,後遺障害部分→症状固定翌日から3年,死亡保険金→死亡翌日から3年となり,それぞれ基準となる日が異なりますので注意が必要です。
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●交通死亡事故は示談までどれくらい時間がかかりますか?
事案によりますが,交通死亡事故は賠償項目が多く計算に時間がかかり,加害者との交渉にも時間を要するため,一般的には半年から1年ほどで,事故が複雑,過失割合が争点になる場合等は1年以上かかります。
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●交通死亡事故の過失割合はどのように決まりますか?
主に①事故状況:実況見分調書と過去の判例を照らし合わせた判断②法律の適用:刑法や道路交通法に基づく違法行為の有無③裁判例:過去の類似事故における裁判例の3つの要素をもとに判断されます。
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●交通死亡事故の時効と請求期限はいつまでですか?
加害者への損害賠償請求は死亡翌日から5年以内,自賠責保険への請求は死亡翌日から3年以内です。ただしひき逃げなど加害者が判明しない場合は死亡翌日から20年が時効期間となります。
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●交通死亡事故の損害賠償請求の手続きは誰がするのでしょうか。
民法で定められた相続人(法定相続人)となります。
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●交通事故の案件で,弁護士に依頼して費用で損することはありますか?
後遺障害等級が認定される事案では費用倒れになる可能性は少ないですが,軽傷や非該当の場合は示談金が少額となり,費用倒れになることがあります。ただし,任意保険に弁護士費用特約が付いていれば費用はかからないことがほとんどです。
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●交通事故の示談交渉を弁護士に依頼すると,どのようなメリットがありますか?
以下のようなメリットが考えられます。
・慰謝料や休業損害・逸失利益などを適正に算定でき,保険会社の提示額を修正できる
・裁判例をもとに保険会社へ適切に反論でき,必要なら裁判で争える
・事故状況を調査し,過失割合を正しく修正できる可能性がある
・後遺障害等級認定を受けやすくなり,異議申立による認定も可能になる
・保険会社との交渉を任せられ,精神的な負担が軽くなる
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●交通事故の被害者参加制度とは何ですか?
被害を受けた本人や家族,死亡事故の被害者の遺族が加害者の刑事裁判に参加できる制度のことです。過失運転致死罪など,一定の刑事事件に適用があります。
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●むちうちで通院慰謝料はもらえますか?
むちうち症でも通院慰謝料は支払われます。症状の種類によって,つまり,医学的に確認できる症状=他覚症状(MRI・レントゲンなどで異常が確認できる場合)があるかどうかで慰謝料の額が変わります。自覚症状のみ(痛みやしびれなど本人の申告のみ)では,他覚症状がある場合と比べ,およそ3分の2程度に減額される場合があります。



