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●過失相殺とは何ですか?
被害者に何らかの過失がある場合,加害者・被害者間の損害を公平に分担するため,加害者に対する損害賠償額を減額する制度をいいます。
実務では,過失相殺について判断された多くの裁判例を検討して,事故類型別の過失相殺の基準を算出した,東京地裁民事交通訴訟研究会編「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」別冊判例タイムズ38号が一般的に用いられています。
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●過失相殺をするには被害者にどの程度の能力が必要ですか?
事理弁識能力(事の是非善悪を弁識する能力)があれば足り,行為の責任を弁識する能力までは不要です。
具体的には,小学生には事理弁識能力があると考えられ,裁判例では5歳の幼稚園児に事理弁識能力を認めたものもあります。
被害者に事理弁識能力がなかったような場合には,「被害者側の過失」が問題となります。
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●被害者側の過失とは何ですか?
被害者本人だけでなく,身分上生活関係上一体をなすとみられる関係にある者の過失を「被害者側の過失」と考え,被害者側に過失があったときは被害者本人に過失があったのと同様に考えることです。
例えば,幼児の場合には,監督義務者(親権者など)の過失を被害者側の過失として考慮するのが一般的です。
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●損益相殺と過失相殺は,どちらを先に行われますか?
損益相殺とは,被害者が交通事故に起因して保険給付等の利益を得る場合に,賠償額からその利益分を控除することです。
損益相殺と過失相殺の順序について,
①健康保険,国民健康保険,厚生年金については,損益相殺をした後,残額に対して過失相殺をします。
②労災保険については,過失相殺をした後,残額について損益相殺をします。
③任意保険の賠償責任保険については,過失相殺をした後,残額について損益相殺をします。
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●素因減額とは何ですか?
被害者側に,損害が拡大した要因がある場合,賠償額を一定の割合で減額することです。身体的素因と心因的素因とに分けられます。
既往の疾患や体質的要因のことを身体的素因といいます。平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても,それが疾患に当たらない場合には,特段の事情がない限り,素因減額の対象にならないとされています。
精神的傾向や性格等の要因のことを心因的素因といいます。心因的素因が個性の多様さとして通常想定される範囲を超えるものでないときは,素因減額をすることができない,とした判例があります(最高裁平成12年3月24日第二小法廷判決)。
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●提示された賠償額に納得がいかず,弁護士に依頼したいです。ただ,裁判までするつもりはありませんが,無理に裁判になることはありませんか?
弁護士が依頼者の意思に反して裁判にすることはありません。あくまで本人の意思に基づきます。
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●駐車場の事故は店に責任がありますか?
原則として当事者に責任があります。
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●追突事故に過失相殺はありますか?
原則,追突事故に被害者の過失はないものと考えられていますが,過失が認められることもあります。
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●追突事故で被害者に過失が認められるのはどんな時ですか?
駐車禁止場所に駐車している場合,あるいは,視界が悪い状況でハザードを灯さずに駐車しているような場合などです。
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●私に過失がないため,保険会社には交渉してくれないと言われてしまいました。なぜですか?
加入している保険会社に支払義務がない場合,示談交渉を代行することは,非弁行為(弁護士でない者が法律行為を代理する)とされているからです。
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●他の事務所に交通事故で依頼していますが,対応に不満があります。このような状況でも相談できますか?
相談可能です。弁護士との委任契約は,対応への不満や相性の問題などを理由に解任することができます。
ただし,これまでにかかった費用や経費が請求される可能性がありますので,精算額を事前に確認しておきましょう。
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●交通事故の相談をしたら,必ず依頼しなければいけませんか?
相談したからといって,必ず依頼する必要はありません。
弁護士が必要に応じて委任契約について提案させていただき,内容に納得できた場合のみ契約となります。また,その場で契約する必要もなく,後日でも大丈夫です。
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●交通事故の示談交渉はいつから始まりますか?
人身部分については,治療が終了してから詳細の交渉を始めるのが一般的です。
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●交通事故に遭った最初の段階で弁護士に相談,依頼しないといけませんか?
示談が成立する前であれば,示談交渉の途中でも弁護士に相談等することは可能です。
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●示談成立後に痛みが出た場合,再度示談交渉はできますか?
原則,示談成立後にやり直すことはできません。ただし示談書に「後に発覚した損害は別途協議する」といった記載がある場合は,例外的に請求が可能になることもあります。
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●示談が成立したら,交通事故の加害者は逮捕されたり刑事事件になったりしないのでしょうか?
刑事事件の手続き自体は進みますが,示談することによって不起訴になったり刑が軽くなったりすることはありえます。
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●死亡事故でも,過失相殺はありますか?
あります。死亡事故であっても,加害者がすべての責任を負うとは限りません。被害者にも過失があると認められる場合には,加害者に全額の賠償金を負担させるのは公平ではないと考えられ,過失の割合に応じて賠償金が算定されます。
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●自賠責保険とは何ですか?
自賠責保険は,加入が義務づけられている交通事故のための強制保険です。事故による傷害に対して一定額が支払われますが,通常は任意保険会社が先に賠償金を支払い,その後に自賠責保険へ請求する仕組みとなっています。
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●任意保険とは何ですか?
任意保険は,事故の補償のために個人が自由に契約する保険です。自賠責保険が強制保険であるのに対し,任意保険は補償を補う目的で加入するものです。
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●人身傷害保険とは何ですか?
人身傷害保険は,事故でご自身に過失がある場合でも,その過失分を含めて補償される保険です。加入状況は保険証券で確認でき,車に乗っていた場合のみ補償されるケースや,歩行中・家族の事故にも対応する場合があります。
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●自分が加入している保険の内容はどうやって調べればいいですか?
保険証券に記載されているほか,詳細は約款で確認できます。多くの保険会社は約款をホームページで公開しており,内容が不明な場合は証券番号をもとに保険会社へ問い合わせることで確認できます。
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●加害者が任意保険に未加入の場合,どうすればいいですか?
自賠責保険による補償を受けることになりますが,補償額には限度があり,十分な補償が得られない可能性があります。そのため,加害者と直接交渉が必要になる場合があります。さらに加害者が自賠責保険にも未加入または期限切れのケースもあるため,注意が必要です。
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●交通事故でも労災保険は使えますか?
はい,業務中や通勤中の事故であれば労災保険が適用されます。ただし,通常ルートを逸脱していた場合は対象外となることもあります。労災保険は他の保険との併用も可能ですが,利用にはメリットとデメリットがあるため,弁護士への相談がおすすめです。



