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「1」 過失相殺とは何ですか?
被害者に何らかの過失がある場合,加害者・被害者間の損害を公平に分担するため,加害者に対する損害賠償額を減額する制度をいいます。
実務では,過失相殺について判断された多くの裁判例を検討して,事故類型別の過失相殺の基準を算出した,東京地裁民事交通訴訟研究会編「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」別冊判例タイムズ38号が一般的に用いられています。
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「2」 過失相殺をするには被害者にどの程度の能力が必要ですか?
事理弁識能力(事の是非善悪を弁識する能力)があれば足り,行為の責任を弁識する能力までは不要です。
具体的には,小学生には事理弁識能力があると考えられ,裁判例では5歳の幼稚園児に事理弁識能力を認めたものもあります。
被害者に事理弁識能力がなかったような場合には,「被害者側の過失」が問題となります。
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「3」 被害者側の過失とは何ですか?
被害者本人だけでなく,身分上生活関係上一体をなすとみられる関係にある者の過失を「被害者側の過失」と考え,被害者側に過失があったときは被害者本人に過失があったのと同様に考えることです。
例えば,幼児の場合には,監督義務者(親権者など)の過失を被害者側の過失として考慮するのが一般的です。
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「4」 損益相殺と過失相殺は,どちらを先に行われますか?
損益相殺とは,被害者が交通事故に起因して保険給付等の利益を得る場合に,賠償額からその利益分を控除することです。
損益相殺と過失相殺の順序について,
①健康保険,国民健康保険,厚生年金については,損益相殺をした後,残額に対して過失相殺をします。
②労災保険については,過失相殺をした後,残額について損益相殺をします。
③任意保険の賠償責任保険については,過失相殺をした後,残額について損益相殺をします。
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「5」 素因減額とは何ですか?
被害者側に,損害が拡大した要因がある場合,賠償額を一定の割合で減額することです。身体的素因と心因的素因とに分けられます。
既往の疾患や体質的要因のことを身体的素因といいます。平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても,それが疾患に当たらない場合には,特段の事情がない限り,素因減額の対象にならないとされています。
精神的傾向や性格等の要因のことを心因的素因といいます。心因的素因が個性の多様さとして通常想定される範囲を超えるものでないときは,素因減額をすることができない,とした判例があります(最高裁平成12年3月24日第二小法廷判決)。