• ●みなし道路とはどういう意味ですか?

    建築基準法上,都市計画区域内において,建物の敷地は幅員4メートル以上(ただし,特定行政庁の指定区域内においては6メートル以上)の道路に2メートル以上接していなければなりません。
    ただし,同法の施行当時,建物が狭い道に密集している場所が多く,形式的にこれをあてはめた場合の弊害が大きく,これを回避するための制度が,みなし道路(2項道路)です。
    現に建築物が立ち並んでいる幅員4メートル未満の道でも,特定行政庁が指定したものは,建築基準法上の道路とみなされるところ,この道路の中心線から水平距離2メートル(ただし,特定行政庁の指定区域内においては原則3メートル)の線をその道路の境界線とみなされる,というものです。
    みなし道路(2項道路)においては,既存建物が。観念上の道路中心線から2メートル離れた線内に入る可能性がありますが,これにより,移転ないし除去の義務まで負いませんが,将来建物を建替えるときは,右境界線内のみなし道路上には建築することはできず,みなし境界線まで後退しなければならないということになります。これをセットバックいいます。

  • ●道路位置指定とは何ですか?

    都市計画区域内にある土地に建物を建てる場合,その建物敷地は原則,幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければなりません(接道要件)。そして,一定の宅地造成等について,各建物敷地が接道要件を満たす道路に接するようにするため,関係者の申請に基づいて特定行政庁から道路の位置の指定を受け,建築基準法上の道路とすることを道路位置指定と言います。これによって,当該位置指定道路に原則2メートル以上接した敷地内には建物を建築することができることが可能となります。道路位置指定の基準には様々なものがありますが,一定の例外を除き,両端が他の道路に接続したものであることなどがあります。

  • ●境界標は,土地の境界を確定するのにどの程度の効力があるのでしょうか。

    土地の境界を決定する基準を定める具体的な法律は存在しません。公図等の図面,境界付近の地形,公簿面積の差異,境界標の状況,占有状況等を考慮して決定されますので,境界標は,土地の境界を決定するための1つの要素ですが,境界標だけで境界を確定することはできないということになります。境界標について,境界の推定力のかなり高い境界標も存在する一方で,推定力の低い境界標もあるということになります。なお,官公庁またはそれに準ずるものが設置した境界標は,一般的に,境界の推定力が高いといえますし,測量をして日が浅く,地積測量図等から判断して位置が正しいとされる境界標,隣接地の所有者同士が了承しあって設置した境界標も推定力が高いといます。これに対して,境界標が設置されてから長い時間が経過してしまっている境界標,容島に抜き差しができるような状況の境界標については,境界の推定力が低いものといえます。

  • ●隣地所有者が承諾なしに勝手に境界標を設置した場合は,隣地所有者に除去の請求ができるのでしょうか。

    この場合,3つの場合分けができます。
    まず,真実の境界に合致していない境界標で,土地所有権を侵害している場合,隣地所有者にその除去を求めることができることは当然でしょう。
    また,真実の境界線に合致しているか不明な場合にも,同様とされるべきです。
    それでは,真実の境界線に合致している場合はどうでしょうか。この点,除去を認めないと,正しい境界標であれば,承諾の設置を肯定されてしまうことから,除去請求できるものと考えます。

  • ●地籍調査はどのようなことをするのでしょうか。

    地籍調査は,土地を一筆ごとに,所有者,地番,地目,境界,地積を調査・測量し,これらを地図(地籍図)及び簿冊(地籍簿)として作成するものです。
    登記所に保管されている公図や登記簿は,現況と整合しないことが多く,正確な地図を作製することを目的として,地籍調査が進められます。地籍調査によって作成されたものを地籍図といい,地籍簿としてまとめて保管されます。地籍図が作成され,都道府県知事等の承認を受けると,その写しが登記所へ送付され,登記官は,地籍簿の所有者,地目,地積と登記簿に記載されたものが一致しないときは,地籍簿に基づき登記簿の記載を変更,更正します。地籍図の写しは,特別の事情のないかぎり,不動産登記法14条地図として登記所に備えつけられます。筆界は,土地所有者その他の利害関係人またはこれらの代理人の確認を得て調査をするものとされ,確認が得られないときには,調査図の当該部分に「筆界未定」と朱書するものとすると規定されています。境界に争いがある場合は,その旨を地籍調査の係官に申告し,筆界未定地として地籍図に境界線を図示しないよう求めることができます。

  • ●筆界特定と筆界確定訴訟の関係はどうなっていますか。

    筆界の特定は対世効をもって筆界を確認したり,形成するものではありません。いわんや所有権の範囲が決められるものでもありませんが,筆界の特定がなされた場合には,事実上,所有権の範囲の確定にも効力があるものといえます。なお,筆界特定がなされ,訴えが提起されたとき(その逆も同じ),裁判所は,訴訟関係を明瞭にするため,筆界特定手続記録の送付を嘱託することができるものとされ,また,判決により,抵触する部分について,効力を失うとされています。

  • ●境界確定訴訟の当事者適格について教えてください。

    当事者適格とは,訴訟において,当事者として訴訟を遂行し,本案判決を求めることができる資格とされます。境界確定訴訟の対象が公法上の境界であるとする通説によって,相隣接する土地の所有者のみ当事者適格が認められるとされています。
    ここでの土地の所有者とは,実質上の所有者であって,登記上所有者であるに過ぎない者には,当事者適格はないとされています。

  • ●土地と隣地との間には,境界杭が打たれていますが,法務局にある地図のコピーを見たところ,現況とその地図上との境界線の位置関係が違っています。周囲の者はその地図は14条地図と言ってます。どちらを信頼すればいいのでしょうか。

    不動産登記法14条1項は,「登記所には,地図及び建物所在図を備え付けるものとする」と規定しています。同条2項では,「前項の地図は,一筆又は二筆以上の土地ごとに作成し,各土地の区画を明確にし,地番を表示するものとする」と規定されています。
    不動産登記法の14条に規定されていることから14条地図と呼ばれるものです。
    この14条地図は,全国的な基準による一筆地測量を行って作成されるので,その精度は高く,公図(旧土地台帳附属地図)に比べて証明力はかなり高いものといえます。よって,むしろ,現地にある境界杭等のほうが,従前と異なる場所に埋められた可能性があります。。
    なお,登記された土地の位置関係や形状を現地において示す「現地指示能力」を有し,その土地の位置関係と形状を現地ではっきりと復元できる能力があり,これを現地復元能力と言います。

  • ●山林の境界を判断するための資料について,教えてください。

    境界標識として,山の尾根(分水線),谷(合水線),沢,崖等の地形の他,巨石,巨木なども用いられる場合があります。当事者の合意があったとしても,それが,境界を示すものかどうか,慎重な検討を要し,その合意による線が現地においてどこにあたるのかについても慎重な検討を要します。森林の形態を示す林相などの占有状態も資料となるものですが,人工林では,林相が同一である範囲で,管理占有が同一の者にあると一応いえるでしょう。なお,下草刈り等の管理の方法や状況も占有の徽表として重要といえます。

  • ●隣地との境界の目印であった杭を隣人が勝手に抜き取ってしまい,境界線が分からなくなってしまいました。このようなことは許されるのでしょうか。また,境界に関する刑罰規定があったら,教えてください。

    刑法262条の2は,「境界標を損壊し,移動し,若しくは除去し,又はその他の方法により,土地の境界を認識することができないようにした者は,五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」と規定しています。境界標とは,権利者を異にする土地の境界を示すために,土地に設置された標識を意味し,柱,杭,堀,柵などの工作物のほか,立木などの自然物も境界標となります。ここで言われる杭は「境界標」に該当します。なお,本罪の境界標は,事実上の境界を意味ますので,その境界標が真の境界線上にないと確信し,正しい境界線上に移動させたとしても,利害関係人の明確な承諾を得なかった場合には,本罪が成立するものとされています。

  • ●公図とはどのようなものですか。

    公図とは,法務局に保管されている旧土地台帳附属地図を言います。
    昭和35年に登記簿と台帳が一元化される以前の土地台帳制度下では,土地の区画及び地番を明らかにするために,土地台帳の外に土地台帳附属地図を備えていました。
    昭和35年,不動産登記法17条所定の地図(現在は,14条地図と呼ばれています)の規定に伴い,旧土地台帳法が廃止されたため,公図はその法的根拠を失いました。しかし,14条地図が整備には時間を要し,土地の登記簿の表題部の記載事項だけでは,現地における土地の位置や,その形状・区画を明示できません。そこで,公図により土地の位置や形状を明らかにする必要があるこちから,登記所には参考資料として保管され,閲覧に供されているのです。なお,地番ごとに線引きされているため,登記簿謄本を図面化したものとして位置づけられるものでもあります。

  • ●公図は境界を確定するにあたって,どの程度の証明力があるのでしょうか。

    公図は,土地台帳の附属地図として長い間税務官署において管理されてきたもので,不動産取引の安全を図るという登記制度の観点から作成されたものではありません。したがって,土地の事実状態を示すものではありますが,精度が低く,現地復元性は有しないとされています。
    もっとも,距離,面積,方位,角度のような定量的側面については信頼性は低いですが,各土地の形状,その相互の配列状態,道路,河川等との位置関係等の定性的側面については参考となると言えるでしょう。

  • ●登記簿上の面積と,実測面積が異なることになりうるのはどうしてなのでしょうか。

    土地の実測面積が登記簿記載の地積より大きい場合,その差を「縄のび」といい,土地の実測面積が登記簿記載の面積より小さい場合,その差を「縄縮み」といいます。登記簿謄本記載の地積は,明治時代に作成された土地台帳をもとに記載され,国民の税負担を軽減しようとする動機と測量技術の低さ等に原因があると言われています。