• 「1」 保証契約とは何ですか?

    保証契約とは,債務者が債務の支払をしない場合に,これに代わって支払をする義務を負う約束をする契約をいいます。大きく特定債務保証と根保証がありますが,前者は連帯保証という形態が多く,後者は包括的な根保証は許されず,極度額や保証期間により制限されることになります。

  • 「2」 連帯保証契約とは何ですか?

    一般の保証と異なり,連帯保証契約は催告の抗弁権・検索の抗弁権・分別の利益がないとされています。「催告の抗弁権」とは,いきなり保証人に請求をしてきた場合に,まずは主債務者に請求することを求める権利です。「検索の抗弁権」とは,主債務者の返済能力がゆえに,主債務者からの返済を求め,あるいは,主債務者の財産の差し押さえなどを求める権利です。『分別の利益』とは,例えば保証人が複数いた場合,保証人の人数で按分した金額だけを負担することです。実務での保証の多くはこの連帯保証と言って過言でないでしょう。

  • 「3」 政府系の奨学金の債務において,私は単純保証人になっています(連帯保証人は別の人がなっています)。債務者,連帯保証人が返済できない場合,単純保証人の私は残債残部を返済しなければならないのでしょうか。

    全部を返済する必要がない余地があります。昨今の裁判例(令和3年5月13日)によれば,単純保証人たる者には分別の利益がありますので,残債のうちの1/2は連帯保証人との関係で債権者との関係で負担をする必要がないとされました。但し,ここでの裁判例は現在,高等裁判所にて係争中ですのでその動向は重要です。

  • 「4」 保証に関して,この度の平成29年の改正により,旧法から内容が変わったと聞きましたが,概ねどのように変更されましたか。実際,それが施行されるのはいつからですか。

    特に重要なこととしては,一定の場合に公証人の保証意思確認手続きを要件としていることや,根保証の見直しに関するものとなどが挙げられます。
    実際,保証契約が人間関係の情誼に基づいて安易になされ経済的窮地に陥ることが少なくないことから法律が強行的に介入することが盛り込まれていると言っていいでしょう。
    令和2年4月1日から施行ですが,下記に述べる公正証書の作成義務との関係では同年3月1日から公正証書作成の嘱託が可能であるとされています。

  • 「5」 根保証とは何ですか?

    債権者と債務者との間で種々の取引から生ずる不特定多数の債務を将来に亘って保証するというものです。個人の根保証の場合には極度額を書面で定める必要があり,また極度額とは,保証しなければいけない上限額のことです。

  • 「6」 いわゆる身元保証契約についても,個人根保証の極度額にかかわる規制があるのですか?

    かつて貸金等にかかわる根保証契約の範囲で規制が及んでいたものですが,この度の平成29年の改正により,これにかかわらず個人根保証契約一般に規制を拡大し,ここでの身元保証契約についても規制の対象となりうるものとされています。ただし,身元保証契約が保証契約の性質を有しない場合にはこの限りではありません。

  • 「7」 賃貸借契約に基づく債務を保証する契約についてはどうですか?

    同様に極度額を定めなければなりません。

  • 「8」 どのような事由で根保証の内容が確定するのですか?

    ①保証人の財産に強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき(ただし,強制執行又は担保権実行の手続きが開始されたときに限る。)
    ②保証人が破産手続開始決定を受けたとき
    ③主たる債務者又は保証人が死亡したとき
    これに加えて,貸金等根保証債務の場合,以下の事由が生じた場合も確定するものとされています。
    ④主債務者の財産に強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき(ただし,強制執行又は担保権実行の手続きが開始されたときに限る。)
    ⑤主債務者が破産手続開始決定を受けたとき

  • 「9」 上記の確定事由を当事者の合意で確定しないものとすることはできますか?

    できません。そもそも確定の趣旨が保証人の保護というところに法が強行的に介入していることによるものと言えます。

  • 「10」 保証における公正証書作成義務とは何ですか?

    事業のために負担した貸金等について個人が保証をする場合,保証契約が有効となる条件として原則として,公正証書により保証人となる意思の明確化が求められます。

  • 「11」 公正証書作成義務の例外について教えてください。

    奨学金の返済債務,居住用の住宅ローンなどは事業性がないので公正証書を作成する必要はありません。また,事業性があっても貸金等債務以外には適用されません。貸金等とは,金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務を言います。
    なお,貸金等債務であっても,主債務者が法人である場合の理事,取締役,執行役,総株主の議決権の過半数を有する者等や,主債務者が個人である場合の共同事業者又は主債務者が行う事業に現に従事している主債務者の配偶者といった,主債務者の債務について十分理解できると解される者が保証人になる場合,公正証書の作成は不要です。

  • 「12」 公正証書作成義務の例外として裁判上の和解であれば許されますか?

    一見,実務的に許容されそうではありますが,法の趣旨からして許されません。尚,個人である第三者が参加した民事調停においても同様です。

  • 「13」 保証契約に関する改正について新法改正前の保証契約については適用があるのですか?

    改正前の保証契約については適用がありませんが,新法施行日以降,当該保証契約が更新された場合のその更新後の保証契約には適用があるというべきです。