第6話 「争続って?」

 

相談者:サスペンスドラマ好きの主婦、岡田さん(以下、「岡田」という。)

解答者:がんばるフレッシュな森弁護士

 

岡田:先週、母が亡くなったのですが、母の遺言書が出てきました。これから先、相続財産を分け合っていくと思うのですが、ドラマのように姉妹で争いあったりしそうで嫌なのです。

そもそも相続手続きって必ずしなければならないのでしょうか?

 

森弁護士:そうですね。相続手続きをしない場合、いくつかトラブルに巻き込まれる可能性があります。

例えば、お母様が多額のローンや借金がある場合には、相続人である岡田さんに借金の返済を求められる恐れがあります。他方で、お母様が不動産をお持ちの場合であっても、岡田さんが独自に処分することはできません。

 

岡田:思っていたトラブルと違いますけど、母の財産を処分できないのは、確かに困りますね。相続ってなんだか慌ただしいイメージがあるのですが、実際どうなのでしょうか?

 

森弁護士:確かに、相続手続きにはいくつか期間制限がありますが、慌てることはありません。岡田さんがふまえるべき相続手続きを一緒に確認してまいりましょう。

ご持参いただいた遺言書は、お母様の自筆のものでしょうか。

 

岡田:はい。母が書いたものです。封もしていないそっけないものですけど。

 

森弁護士:お母様が書かれた自筆証書遺言は、お母様の最期の住所地家庭裁判所で、検認という手続きを行う必要があります。検認は、遺言書の偽造や変造を防ぐために行う必要があるのです。

 ちなみに、封印された遺言書をその場で開封した場合、過料が課される場合がありますので、絶対に開封してはいけません

 

岡田:相続ものドラマは見ているのですが、検認は初めて聞きました!

 

森弁護士:はい。もっとも、お母様の遺言書は封印されていないため問題となりませんからご安心ください。

次に岡田さんがすることは、遺言書の内容を確認したうえで、3ヶ月以内に3つのうちいずれかを選択して、家庭裁判所に申述をすることになります。

①遺産をすべて相続する単純承認

②相続によって得た財産の限度でお母様の借金を受け継ぐという限定承認

③すべて相続を放棄する相続放棄の3つです。

 なお、注意して頂きたいのは、相続放棄は借金といったマイナスの財産を相続しなくてもいい反面、お母様の預貯金等といったプラスの財産も相続できなくなります。

ですからマイナスを差し引いてもなお相続するメリットがあるかどうかという点も踏まえてお考えになってくださいね。

 

岡田:3ヶ月経つ前に、調べて考えなければいけないって結構しんどいですね。

 

森弁護士:もし岡田さんがいずれかを決定できないときには、家庭裁判所に申述をすれば、さらに3ヶ月ほど期間を伸張することはできます。

 

岡田:家庭裁判所に言えば期間を延ばしてもらえるのですね。

でも、相続するメリットが残りそうかなんてどうやって調べたらいいのでしょうか?

 

森弁護士:今回はお母様の遺言書があるので、基本的にはこの内容を中心にして相続人や遺産を調べることができます。もっとも、他に相続すべき財産について調査する必要があれば、こちらで並行して調べていきます。

それでは遺言書を拝見してもよろしいですか?

 

岡田:はい、お願いします。

 

森弁護士:なるほど。形式などは整えられていますね。いくつかある不動産の表示については、わかりやすいように、番号を振ってしまいましょう。お母様の相続人や遺産を確認できる部分を簡単にまとめるとこのようになります。

遺言書

(1)3から6までの土地は岡田一家の相続とする。

(2)1,2の土地は「岡田B子の相続とする」

(3)7の土地は「岡田B夫に譲る」

(4)8の土地の花子の持分4分の1を「丙野C子に相続させてください。」

 

森弁護士:ここに記載されている方との関係を伺ってよろしいでしょうか。

 

岡田:はい。うちの関係は、このようになっています。
2015.9.8_相続させる旨の遺言(画像).jpg

【相続関係図】

→すでに亡くなっている方 ◎→相続人

この遺言書に従うと、岡田さんご家族が遺産のほとんどを相続するようですね。

 

岡田:そのようです。だから、姉から恨まれやしないかと冷や冷やしているのです。もっとも、この遺言書のとおりに相続できるなら、私は相続しようと思っています。母は不動産の賃貸などをしていたので、私もそれを引き継ぎたいのです。

 

森弁護士:そうですか。それでしたら、お母様は確定申告をしている方でしょうから、岡田さんは、相続の開始があったことを知った日翌日から4か月以内準確定申告をする必要があります。その年の1月1日からお母様が亡くなられる日までに確定した所得税の清算を、お母様に代わって相続人がするわけですね。

 

岡田:確定申告って2月か3月だと思っていました。気を付けます。

でも、実際に遺言書どおりに相続できるものなのでしょうか。

姉からは、「お母さんはせっかちだから、私たちの代わりに遺産を分ける方法を書いただけだから、残された私たちが遺産分割協議をしないと、最終的に相続財産を分けたことにならないでしょ」って言われまして。そうだとすると、やっぱり協議をすることになるのでしょうか?

 

森弁護士:結論から言うと、協議をすることなく岡田さんが遺言書の通りに相続することができます。お母様の遺産ですから、遺産分割の仕方についてもお母様が自由に指定することができるのです。

もっとも、相続人全員が一致すれば、お母様の遺言に反する内容の協議をすることはできます。お母様が遺言を残された意志は、結局、相続人同士で無用な争いが生じることを避けることにありますから、全相続人の意思が一致しているなら争いは生じませんよね。

 

岡田:そうなのですね。姉A子の取り分が全然ないようなのですが、これでもいいのでしょうか?

 

森弁護士: たしかに遺言書のとおりにするとA子さんの取り分が全くありません。しかし、A子さんご自身が、遺留分減殺請求権を行使することで、自己の取り分を主張することはできます。

 その結果、A子さんの遺留分の部分は、減殺者であるA子さんと非減殺者である岡田さんとの共有状態になります。

 

岡田: ややこしいですね。

 

森弁護士:そうですね。ただし、この遺留分減殺請求権はお母様が亡くなってから1年以内に限って行使することができますから、その期間をこえて請求されることはありません。

 

岡田:なるほど。1年以内に姉から遺留分というものを請求される可能性があるのですね。

他に気を付けるものはありますか?

 

森弁護士:そうですね、相続税の申告にはお気を付けください。

課税対象となる財産から基礎控除をして、なお財産が残る場合には、相続税が発生します。基礎控除の具体的な内容は、以下の通りです。

 

 3000万円+600万円×法定相続人の数  

 

この法定相続人の数は、相続放棄をした者がいても、その者も含めた数です。(なお、法改正について十分ご留意ください。)

 

岡田さんの場合は、法定相続人が5人ですから、基礎控除額は6000万円になります。仮に、お母様の遺産がこの額を上回る場合には、被相続人であるお母様が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に申告する必要があります。

 

岡田:遺産がいくらになるといった計算なども手伝ってもらえますか?

 

森弁護士:そうですね。税理士と協力しながら、課税対象となる財産は何か、特例の適用がないかというところからお調べいたします。

 特例について、ひとつ例をあげれば、小規模宅地等の特例と言って、面積が一定の限度内であれば相続税が減額されるといったものがありますから、岡田さんの不動産にその適用がないかも検討しましょう。

 

岡田:相続って思ったより手続きも多いですし、期間制限もあって大変ですね。親族でトラブルならないようにと、そればっかり考えていましたが、現実的な手続きの連続でそれどころではないですね。

 

森弁護士:確かに手続きも大変ですが、やはり、相続問題はのちのちのトラブルを招きがちです。相続人それぞれで、遺産をどうしたいかという気持ちが、時間の流れとともに変化することもありますからね。

だからこそ、できるだけ早い段階で資料を集め、各相続人が納得した遺産の分け方をできるよう決着をつけておくことが、そのようなトラブルを避けることになるのです。

今が正念場と思って、一緒に頑張っていきましょう!