婚姻費用

※ 回答の詳細は質問をクリック(ないしタップ)ください。

「1」 3か月ほど前に,夫が家を出て別居が開始しました。別居後,夫は,給与の振込口座を変えてしまったらしく,生活費が全く入らなくなってしまいました。私のパートの収入だけでは子どもを含めた生活費が足りません。私は,夫に対して生活費を支払うように言えるのでしょうか?

夫婦は,婚姻期間中たとえ別居をしていても,婚姻家庭がその資産・収入・社会的地位等に応じた通常の社会生活を保持するために必要な生活費を分担するものとされています。この生活費のことを「婚姻費用(婚費)」といいます。
たとえ別居をしていても婚姻関係は続いているので,生活費を入れない夫に対して生活費を支払うように請求することができます。

「2」 相手方が任意に婚姻費用を支払わない場合に相手方に請求する方法・手続にはどのようなものがありますか?

婚姻費用分担の調停,婚姻費用分担の審判があります。
調停は,家庭裁判所において両当事者が各々負担する婚姻費用の額について協議し,合意によって決める手続です。調停の話合いで解決できなかった場合には,審判に移行し,裁判所が婚姻費用を決定することになります。

「3」 調停又は審判の申立てをすることのメリットは何ですか?

調停が成立した場合又は婚姻費用分担の審判がなされた場合,これらは確定判決と同一の効力を有することになります。そのため,相手方が任意に婚姻費用を支払わなかった場合には,相手方の給料などの財産を差押えなどして取り立てることができます。

「4」 家を出た夫から生活費の支払もなく,現在も貯金もほとんどありません。調停や審判の結果が出るまでの当面の生活費がなく困っています。何かいい方法はないでしょうか?

婚姻費用の分担を急ぐ場合には,①生活費の仮払いを求める調停前の仮の措置を調停委員会に求めたり,②審判前の保全処分の申立てをしたりすることが考えられます。

①の調停前の仮の措置は,家庭裁判所が調停のために必要と認めた時は,暫定的に生活費の支払を命じることになります。相手方がこの命令に従わず生活費を支払わなかったときは,10万円以下の過料の制裁が科せられる可能性があります。しかし,調停前の仮の措置では,支払をしない相手方の財産に対して差押えをすることができませんので必ずしも実効性が高いものではありません。

②の審判前の保全処分は,調停前の仮の措置と異なり,相手方の財産に対して差押えをすることができるので強力な手段といえます。ただし,この保全処分の申立てをするためには,婚姻費用分担の調停が不成立に終わり審判に移行した場合,又は最初から婚姻費用分担の審判を申し立てていることが必要となります。

「5」 婚姻費用はどのようにして算定されるのでしょうか?

夫婦双方の収入を基礎に算定が行われます。基本的な考え方としては,収入の多い方が,収入の少ない方へ生活費を支払うことになります。そのため,婚姻費用を請求した側の収入が,請求された側の収入を上回っていた場合には,婚姻費用の請求が出来ないことになります。

簡易な算定方法としては,東京家庭裁判所が作成している養育費・婚姻費用算定表を用いて算定することができます。下にある表の様に子どもの年齢・人数ごとに算定表が作成されており,該当する表を用いて簡易に算定するものです。

この表は実務でもよく利用されていますが,子どもの人数構成や収入の額が該当しない場合があるとともに,当事者の個々具体的な事情を斟酌できないというデメリットがあります。

そのような場合には婚姻費用を算定する計算式をもって個々具体的に算定をすることがありますが,それに長ける弁護士でないと難しいと思われます。
IMG_santei2.png
(東京家庭裁判所・「養育費・婚姻費用算定表」・14頁目
(http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/)より引用)

「6」 婚姻費用を請求する相手方の収入が不明の場合にはどうしたらいいのですか?

収入を認定する資料として,確定申告書や原徴収票,給与支給明細書等が考えられます。しかし,これらの資料が無く,相手方の収入の手がかりが無い場合には,賃金センサスを前提に相手方に一定程度の収入があると仮定して婚姻費用を算定します。

※「賃金センサス」とは、厚生労働省が,毎年,事業所に対して,その属する地域、企業の規模別に、雇用形態や就業形態、職種や性別、年齢、学歴などの労働者の属性別に賃金の額を調査し,その平均値を出した統計資料のことをいいます。正式名称は「賃金構造基本統計調査」といいます。

「7」 別居中の妻は,働くことができるのに働きません。このような場合にも,婚姻費用の算定に当たって,妻は無収入となるのでしょうか?

無職の場合,原則その収入は「0円」と算定します。しかし,十分働けるのに労働意欲がなくて働かない場合のように合理的な理由なく働かない場合には,賃金センサスをもとに収入を仮定して,婚姻費用を算定することがあります。

「8」 別居後,婚姻費用が支払われなくなって半年が経ちました。いつの時点まで遡って相手方に婚姻費用を請求できますか?

実務上は,調停又は審判を申し立てた時点まで遡って婚姻費用を請求することが多いです。

「9」 別居後,婚姻費用の支払を受けることなく,そのまま離婚をしました。離婚後に未払いの婚姻費用を請求することはできますか?

原則できません。
婚姻費用の請求をできる根拠は,夫婦間に相互の扶助義務があるからです。離婚が成立すれば,扶助義務もなくなるため,婚姻費用の請求もできなくなります。
ただし,離婚前に調停・審判の申立てをしたが,離婚成立までに調停の成立・審判の確定がしなかったといった場合には,その請求権は消滅しないとされています。
実務上では,未分担の過去の婚姻費用は,離婚後は,婚姻中の財産関係の清算として財産分与の方法によることが多いです。

「10」 子どもが私立学校に通っている場合に,その学費の分の婚姻費用の増額を主張できますか?

原則主張できません。婚姻費用には子どもにかかる学費等も含むものとして計算がされています。
しかし,相手方が子どもの私立学校の進学に同意しているような場合や,夫婦の資産,収入,学歴,職業等総合的に判断して,相手方に負担させることが相当な場合には,加算されることもあります。

※ お気軽にご連絡ください。

momiji-icon02.png弁護士法人 もみじ総合法律事務所momiji-icon03.png