不貞慰謝料

不貞慰謝料

夫の浮気により夫婦関係が破綻し,離婚を考えています。この場合に,夫とその不倫相手の女性に対して慰謝料を請求することはできますか?

できます。
夫と不倫相手の女性双方に請求すること,一方のみに請求することもできます。ただし,慰謝料を請求する相手によってその慰謝料の内容がかわるので注意が必要です。

①夫に対する請求
夫に対しては,不倫という婚姻期間中の個別の不法行為によって精神的苦痛が生じたとする慰謝料を請求できます。この慰謝料請求については,夫と不倫相手による共同不法行為として,夫とともに不倫相手に対して請求ができます。
また,不倫等を理由に夫婦が離婚に至った場合には,妻は,夫に対して,離婚をすること自体によって精神的苦痛を受けたことによる慰謝料請求が出来ます。
夫に対して,これらの慰謝料をそれぞれ請求することが可能です。

②不倫相手の女性に対する請求
不倫相手の女性に対しては,①で説明したように不倫行為という不法行為そのものに対する慰謝料請求をすることは当然にできます。
他方,夫婦ではない第三者に対する離婚そのものについての慰謝料を請求については,近時,最高裁の判例が新しく出ており,以下で説明するように,特段の事情が無い限り,不貞相手には原則請求できない,と判断されています。

離婚そのものによる慰謝料とはどのようなものですか?

離婚をすることそのものによって生じる精神的苦痛を償う慰謝料のことを言います。相手方である夫(又は妻)の「有責不法な行為によって離婚するのを止むなきに至ったことにつき,相手方に対して損害賠償請求をする」(最高裁判所昭和31年2月21日民集10巻2号124頁)ことができるとされています。
他方,不貞行為によって離婚に至ったとして,不貞相手等の夫婦以外の第三者に対して,離婚そのものに対する慰謝料請求が出来るかについて,最高裁判所平成31年2月19日第三小法廷判決は,原則請求できない,との判断をしました。判旨を以下に引用しますが,要約すれば,離婚するか否かは本来夫婦の意思で決められるものであるから,不貞相手等の第三者においても直ちに離婚そのものに対する責任は負わないが,その第三者が夫婦を離婚させるような意図を持って行動し,その結果,離婚に至ったという特段の事情があれば慰謝料を請求できるということです。
そのため,不貞が原因で離婚をしたとしても,その不貞相手に直ちに離婚そのものに対する慰謝料請求はできません。

【最高裁判所平成31年2月19日第三小法廷判決】
「夫婦が離婚するに至るまでの経緯は当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが,協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても,離婚による婚姻の解消は,本来,当該夫婦の間で決められるべき事柄である。
したがって,夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は,これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても,当該夫婦の他方に対し,不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして,直ちに,当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは,当該第三者が,単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。」
と判断しています。

離婚に伴う慰謝料の額はどのように算定されますか?また,慰謝料額の相場はありますか?

実務では,①行為の有責性,②婚姻期間,③相手方の資力等を要素として総合的に考慮されることが多いです。
①行為の有責性とは,婚姻破綻原因,破綻に至る経緯,婚姻生活の実情,破綻原因の態様,責任の割合等を考慮します。
②婚姻期間が長いと慰謝料額が高額に算定される傾向にあります。
③相手方の資力は,これにより有責性や精神的苦痛の大きさが影響するものではありませんが,当事者双方の年齢,職業,学歴,経歴,収入等を総合的に判断し,会社経営者等で収入や資力が多く生活水準が高い場合には,離婚慰謝料も高くなる傾向があります。
また,慰謝料額の相場については,上記のように様々な考慮要素を総合的に判断して算定するため,ケースバイケースとしか言えない側面もありますが,おおよそ200万円~300万円程度が多い傾向にあります。

離婚に伴う慰謝料請求に当たり,注意すべき点はありますか?

まずは,3年間の消滅時効によって請求権が時効消滅する前に請求を必要があります。離婚そのものについての慰謝料及び婚姻期間中の個別の不法行為に対する慰謝料ともに,不法行為に基づく損害賠償請求権を根拠にするものです。そのため,離婚そのものについての慰謝料請求権は離婚成立から3年以内,個別の不法行為に対する慰謝料請求権は,個々の不法行為から3年以内に請求をしなければ,請求できなくなってしまいます。
ただし,個別の不法行為に対する慰謝料請求権の消滅時効については,仮に,3年の時効期間が過ぎていても,離婚成立の日から6か月以内に調停の申立てや訴訟を提起すれば,時効が完成せず,請求ができることになっています(民法159条)。
次に,婚姻関係が破綻した後の不貞関係については,慰謝料の請求が出来ません。不貞行為が不法行為として損害賠償請求できるのは,不貞行為が婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為にあたるからです。既に婚姻関係が破綻しているのであれば,たとえ,不貞の関係をもったとしても,侵害されるべき権利や利益がないため,不法行為に該当せず慰謝料請求が認められません。
また,協議離婚をする場合に,その離婚協議書に両当事者に債権債務がないことを確認する清算条項を入れると,離婚後に慰謝料請求をすることが困難になります。しかし,協議の時点では,夫(又は妻)に愛人がいることを知らなかった等の事情があれば,その清算条項は無効になる可能性もあります。

離婚の慰謝料はどのようにして請求すればよいですか?

まずは,交渉によって相手に任意の支払を求めることが考えられます。
相手が任意の支払に応じない場合,選択できる請求方法は,離婚の成立の有無によって変わってきます。

①離婚成立前の場合
離婚と併せて慰謝料の支払いを求める調停を申し立てることが出来ます。離婚のみ調停が成立した場合,改めて慰謝料についての調停を申し立てることが出来ます。また,離婚についても調停が成立しなかった場合,その後の家庭裁判所に対する離婚訴訟と併せて慰謝料支払いを求める訴訟を提起することができます。
離婚が成立していない時点においても,不貞相手等の第三者に対して,地方裁判所(請求額によっては簡易裁判所)に対して,慰謝料の支払いを求める訴訟提起が出来ます。
また,離婚訴訟が提起されている場合,不貞相手等の第三者に対する慰謝料請求訴訟を離婚訴訟と併せて審理するように家庭裁判所に申立てをすることができます(人事訴訟法8条)。

②離婚成立後の場合
離婚成立後でも,離婚成立から3年以内であれば,慰謝料の支払いを求める調停を申立てることができます。調停での話し合いがまとまらなかった場合,審判には移行せず,地方裁判所(請求額によっては簡易裁判所)に対して,慰謝料の支払いを求める訴訟提起をすることになります。この場合にも,夫(又は妻)とともに不貞相手を一緒に訴えることも,どちらか一方のみを訴えることもできます。

内縁の関係を不当に相手方から解消された場合に,慰謝料請求をすることはできますか?

内縁(婚姻の届出は無いが,当事者双方の間に社会通念上の婚姻意思があり,かつ,事実上の夫婦共同生活がある場合)と認められる場合には,婚姻の法的効果のうち,夫婦共同生活から生じる法的効果は認められると解されています。判例においても,内縁と認められる場合に,正当な理由なく内縁関係を解消した相手方に対して,内縁配偶者の地位を侵害したとして,損害賠償責任を認めたものがあります(最高裁判所昭和33年4月11日民集12巻5号789頁)。

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